各厩舎の猛暑対策がアツい!流行のドライミスト、24厩舎使用
2018年8月15日 05:30 調教スタンド前に設置された温度計が34度に達した美浦トレセンの午後。日焼けしたように胸まで真っ赤なナツアカネ(夏のトンボ)が飛び回る馬道を歩いていると、厩舎棟を海の家さながらにくまなく覆ったよしずの向こうから涼しげな声が聞こえてきた。「こっちは過ごしやすいですよ。少し休んでいったらどうですか?」。声の主は高橋祥師。10年前、暑さ対策として厩舎に初めてこの葦(あし)のブラインドを本格導入したトレーナーである。「直射日光を遮りながら風を通す。カーテンと違って建物の外に置くから余計な熱もこもらない。体感温度で2度ぐらい違います。昔ながらの人の知恵です」と同師は涼しい顔で言う。
エネルギーセンターの調査ではよしずの日射遮へい率は70〜80%、熱伝導率はコンクリートの10分の1、斜めに立て掛けるため開口部が大きく、風通しも抜群だ。「暑さ対策で一番大切なのは風通し。厩舎の地面が日に焼けて熱を発するのも防げます」と小島茂師は語る。美浦トレセンのよしずを一手に取り扱っている増尾電気設備(茨城県美浦村)によれば、今年は42厩舎に納品。全厩舎の約3分の1が葦のブラインドの恩恵にあずかっているのだ。「7月初めに一斉に取り付けて、9月末から10月上旬に引き揚げますが、5年前から注文数は変わっていません。それより、最近増えているのはドライミスト(霧散布)です。藤沢和厩舎で初めて配管工事をしてから3年で24厩舎まで広まりました」(同設備)
「涼んでいってくださいよ。屋外と4度は違いますから」。高橋文師に案内された新厩舎(北の杜)では馬房の上から細かい霧が吹き出している。蒸発するときの気化熱で気温を下げる仕組み。その細かい霧を扇風機で拡散することでより大きな効果を上げているという。「夏を乗り切るには体力づくり。ドライミストで涼しい環境をつくった上で、カロリーも多めに与えて鍛え込んでいます」。同師は師匠、大久保洋吉元調教師のやり方を踏襲して冬場と同じ調教量(毎朝1時間50分)を課している。
「少ししょっぱいですけど、熱中症予防には欠かせませんよね」。菊川師はドライミストに加えて、電解質パウダーをカイバや飲み水に加えている。人間同様、馬も汗をかくと、水分の他に塩分などの電解質が失われるからだ。菊川師から頂戴した電解質パウダーをなめながら、ナツアカネが飛び回る旧盆中日のトレセンを再び歩いた。