【東京新馬戦】アルマドラード、黄金の馬体 “1勝より一生”大切に育て紡がれる血統

2020年10月7日 05:30

アルマドラード

 施されたら施し返す、馬の恩返しだ!スプリンターズSをグランアレグリアで優勝した藤沢和厩舎が、東京開幕週に噂の良血2歳馬を送り込む。11日の5R新馬(芝2000メートル)には厩舎に念願のダービータイトルをもたらしたレイデオロの全弟アルマドラードをスタンバイ。「馬の恩返し」などを信条に現役最多1500勝を挙げた藤沢和雄調教師(69)にとって最後となるクラシックへ名乗りを上げる構えだ。

 競走馬時代のレイデオロとダブらせたくなる鍛え抜かれた鋼のようなボディー。伸びやかでしなやかで見事に均整が取れたボディーライン。絵画から抜け出してきたような黒鹿毛に視線を送りながら藤沢和師は今春から繰り返してきた言葉を再び口にした。「馬っぷりが素晴らしい。穏やかな気性でコントロールしやすい。クラシックを意識してやってます」。9月30日に行われたアルマドラードの1週前追い切り時のシーン。全兄レイデオロのデビュー時よりもひと回り大きい500キロ前後の馬体の乗り心地にルメールも思わず口元を緩めた。「お兄さんたちよりも全然乗りやすい」

 育成先のノーザンファーム天栄(福島県)から5月16日に美浦トレセン入り。ゲート試験に合格した後、基礎体力を養うために同ファームへ再放牧。9月8日に帰厩して調教を重ねてきた。再来年2月で70歳定年を迎える藤沢和師にとって来年が最後のクラシック。その大役を担う2歳勢の“真打ち”と呼ばれてきたのがアルマドラードだ。

 引退まで1年半を切った同師は“本分”という言葉をしきりに口にする。自身が考える調教師の本分とは…。「馬を傷めず、余力のあるうちに牧場へ返すことじゃないか。子づくりという大仕事が待っているから。大切にすれば鶴みたいに馬も恩返ししてくれる」

 通算1500勝の記念碑には「1勝より一生」という師の名言が刻まれている。目先の勝利より繁殖生活を含めた馬の一生が大切との自戒を込めた言葉。無事に牧場に戻せばその子や孫が恩返ししてくれる。17年前に惜しまれながら引退、繁殖入りさせた“金髪の淑女”レディブロンドが“黄金の女性”ラドラーダを生み、ラドラーダから“黄金の王”レイデオロや、最後のクラシックを託されるアルマドラードが生まれた。

 血統で紡がれる馬の恩返し。スペイン語で“黄金の魂”(アルマドラード)と名付けられた真打ちは藤沢イズムの集大成でもある。

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2020年10月7日のニュース