【秋華賞】デアリングタクト 牝馬無敗3冠へ“冠全無欠”仕上げ!胸前の筋肉成長54秒7
2020年10月15日 05:30 牝馬3冠最終戦「第25回秋華賞」(18日、京都)の追い切りが14日、東西トレセンで行われ、無敗の2冠馬デアリングタクト(杉山晴)が栗東坂路で軽快に伸びた。松山弘平(30)との呼吸はピッタリ。春からのスケールアップは明らかで史上初、牝馬無敗3冠へ死角はない。
馬任せの54秒7(800メートル)の中にデアリングタクトの成長の全てが凝縮されていた。外ラチから等間隔を保ち、真っすぐ走り続けた。陣営は5馬身前にミスニューヨーク(秋華賞登録)など2頭を置き、目標にさせようとしたが2冠馬は意に介さず自分の走りだけに集中した。胸前の筋肉はオークス時以上に盛り上がり、前脚は高く上がった。追わなくても春から全てがバージョンアップしたことが明確に分かった。
感触を確かめ、松山は語った。「負荷をかけ過ぎずリラックスして走れていた。中間、併せ馬だったり単走で長めにやったりと(パターンを変えて)順調にこなせている。折り合い面の成長を感じる」。7日の1週前追いが圧巻だった。トップスピードに乗っても馬体は上下にブレず、四肢だけが素早く回転する。このピッチの速さ、瞬時に上がるギアがどんな状況でもライバルをなぎ倒す秘密。調教だけなら、もう異次元の世界に到達している。
春の2冠は見る者の心を揺さぶった。降雨、重馬場の中、4角12番手というとても届かない位置から残り30メートルで差し切った桜花賞。外に出せず、他馬をさばいて何度も軸脚を替えながら残り20メートルで先頭に立ったオークス。「大胆な戦法」の馬名通り、ドキドキさせて最後に勝つ。ドラマチックな勝ち方は令和のニュースター誕生を予感させる。
メジロラモーヌ、スティルインラブ、アパパネ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイ。牝馬3冠なら6頭目だが無敗達成は史上初。「いい緊張感を持って臨める。僕にとってデアリングタクトは特別な存在。何とか結果を出したい」(松山)。3冠馬誕生は常に時代とリンクしてきた。東日本大震災の2011年にはオルフェーヴルが出た。さかのぼれば太平洋戦争が始まった1941年にセントライトが初代牡馬3冠馬となった。
世界が苦しむ未曽有のコロナ禍。どんな苦境も切り開く名牝が出現したのは運命だ。競馬場に観客が戻って初のG1。そして翌週の菊花賞でもコントレイルが同じく無敗の3冠に挑む。春は無観客だったクラシック。競馬史に残る、希望に胸躍る瞬間を我々は目の当たりにする。
【春2冠の追い切りVTR】
▼桜花賞 松山が乗って坂路で単走。外ラチ沿いをリズム良くスムーズに上がって4F53秒9~1F12秒6。松山は「先週は気負って内にモタれたが今回は真っすぐ走れた。折り合いも問題なく、いい追い切りだった」と語った。
▼オークス 松山を背に坂路で単走。周囲に馬が多いが走りに集中。桜花賞前より前脚を高く上げ、4F55秒0~1F12秒8をマーク。松山は「時計より動き。まとまっていて凄く良かった」と納得。