【有馬記念】オーソリティ95点 思春期から大人へ成長スパート!1年間で急激に進化

2020年12月22日 05:30

<有馬記念>1年間で急成長を遂げた馬体のオーソリティ

 強い牝馬か、成長著しい3歳牡馬か。鈴木康弘元調教師(76)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第65回有馬記念ではクロノジェネシス、ラッキーライラック、カレンブーケドールの牝馬3強とともに3歳馬オーソリティを1位指名した。達眼が捉えたのは2歳暮れからの1年間で大きな変貌を遂げた“成長スパート”だ。

 人間の体は10代前半の思春期に急激な成長を遂げます。背丈が10センチ近く伸びて、子供から大人の体に変わっていく。思春期の急激な身長の伸びを「成長スパート」と呼ぶそうです。競走馬にとっての成長期は2歳後半から3歳後半。この1年で体高の頂点となるキ甲(首と背中の間の膨らみ)が抜け、古馬然とした体つきに進化していきます。それにしても1年ぶりに見たオーソリティの変貌ぶりには驚きを禁じ得ません。

 昨年のホープフルS以来となるG1馬体診断。当時より筋肉のボリュームが明らかに増している。特に、トモと首差し。見違えるほど立派になった。2歳時には小さなつぼみみたいに未熟だったキ甲も発達している。「しばらく見ないうちに随分たくましくなったな」。1年ぶりに帰省した思春期の孫と再会したような気分です。実のなる木は花から知れるといいます。大成する人は子供の頃からその資質が見えるとの意味。オーソリティも2歳時から弾力性のある筋肉をバランス良く身につけ、一流馬の資質を見せてきました。それから1年、上質な筋肉には厚みも加わったのです。

 顔つきはもっと変わりました。ホープフルS時には反抗するように耳を左右に開きながら白目でカメラマンをにらんでいました。“暴れん坊将軍”と呼ばれたオルフェーヴルの産駒らしいヤンチャ顔。ところが、1年後の撮影では、耳をしっかり立てながら正面を見据えています。反抗心が強い思春期から成熟した大人の顔へ。目力の強さだけは相変わらずですが、父譲りの闘志の表れでしょう。力みもなく自然に尾を垂らし、四肢は大地をしっかり踏みしめている。気持ちが適度に入った大人の立ち姿です。

 両前の蹄にはエクイロックス(充てん剤による接着装蹄)が施されています。ホープフルS時は充てん剤を使わず通常の蹄釘(ていちょう)による装蹄でした。装蹄の違いは蹄にかかる1年分の負担の大きさを表しているのかもしれません。ともあれ、蹄以外には不安のかけらも見当たらない。背中も腹下も長い中長距離体形。有馬記念の2500メートル戦は望むところです。

 実績、人気とも牝馬勢が優位に立つ今年の有馬記念。強い女性陣に対抗できるのはオーソリティの「成長スパート」しかありません。(NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の76歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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