【ダービー】里見オーナー サトノレイナスで悲願の制覇へ “チャーチルの名言”を胸に挑む
2021年5月25日 05:30 名牝への道を進め――。競馬の祭典「第88回日本ダービー」(30日、東京)でウオッカ以来14年ぶりの牝馬Vに挑戦するサトノレイナス(牝3=国枝)。同馬を所有する里見治(はじめ)オーナー(79)が、「最大の夢」と語るダービー制覇への熱い思いをスポニチ本紙に独白した。16年サトノダイヤモンドでは8センチ差で逃した悲願、今度こそ。
――いよいよダービーが迫った。
「ダービーは馬主になって最大の夢ですからね」
――サトノレイナスは18年セレクトセールで購入した。兄サトノフラッグも購入していたがピンと来るところがあった?
「サトノフラッグは馬体も良く、デビュー当初から期待していました。レイナスも牝馬ながら兄以上に素晴らしい馬体の持ち主で、迷わずセリで購入しました」
――「レイナス」という馬名もいい。
「響きもいいですし、ぴったりの馬名だと思っています」
――競馬を始めたきっかけは?
「馬を持つようになったきっかけは会社の従業員からの仕事上の要請があったためです。15年ほど前から本格的に始めた時はクラシックを狙える血統、それも牡馬が多かったですね。最近ではダート血統や牝馬、自家生産の馬も増えてバラエティーに富んでいます。特に所有した牝馬が母になり、その子が活躍してくれるのが非常にうれしいです」
――ダービーは2着が2度。特に16年サトノダイヤモンドは道中に落鉄して、勝ったマカヒキから8センチ差。今だから話せる心情があれば…。
「あの時は本当に悔しい思いをしました。ここ一番で落鉄するとは…。でも厩舎関係者が精いっぱいやってくれた結果。ダービー制覇の夢は次に取っておこうと思いました。それをレイナスが繋(つな)いでくれる。また、ダイヤモンドの子、レイナスの子がそれを繋いでくれれば、馬主みょうりに尽きます」
――牝馬のダービー制覇といえば07年ウオッカ。当時、どのように思ったか。
「14年前ですから、私にとってダービーは別の世界でした。強い牝馬もいるものだなあと感心していましたよ。最近は全世界的に牝馬が強くなっているように感じます」
――サトノレイナスのダービー出走には国枝師とルメール騎手からの進言があったと以前にうかがった。
「正直、調教師から進言された時は少し驚きました。まだ重賞も勝っていないので…。ただ、デビュー当初から、レイナスは距離適性も考えて牡馬路線を歩ませたいとの意向がありましたので、その後のレースを見て考えようと思いました。阪神JF、桜花賞ではソダシに勝てないまでも凄い脚を使ってくれたのでダービー出走を決断しました。勝算はあると思っています。5年前のサトノダイヤモンドの悔しさを晴らせればと願っています」
――改めてダービーへの思いを。
「よく、一国の大統領になるよりもダービー馬のオーナーになる方が難しいといわれます。その難関にチャレンジを続けられるのは幸せなことです。3歳馬の頂点を決めるレース。このコロナ禍の時こそ、競馬ファンの方々と共に少しでもダービーが盛り上がってくれればいいなと思います。レイナスも頑張ってくれると思います」
◆里見 治(さとみ・はじめ)1942年(昭17)1月16日生まれ、群馬県出身の79歳。セガサミーホールディングス代表取締役会長。65年に実家が経営していた食品メーカー「さとみ」の事業を新規開拓しゲーム機などの販売を手掛ける。80年、関連企業だったサミー工業(現サミー)の社長に就任。パチンコ、パチスロ機の開発、販売に尽力し同社を業界大手へと成長させた。04年に大手ゲーム機メーカーのセガと経営統合。初の所有馬はミラクルサミー(36戦5勝)。同馬の初出走から今年で節目の30年目を迎える。
▽セレクトセール 日本競走馬協会が主催する国内最大のセリ市。競走馬売買の透明化と新規購買者の開拓を目指して98年にスタートした。毎年夏にノーザンホースパークで行われ、大物馬主や調教師が一堂に会する。主なセール出身馬はディープインパクト、デアリングタクト、キングカメハメハなど。サトノダイヤモンド、サトノクラウン、サトノアラジンも同セール出身。
▽「ダービー馬のオーナーになることは、一国の宰相になることより難しい」 世界各国で開催される“ダービー”の発祥である英国の首相で、競走馬を所有したウィンストン・チャーチルが語ったとされる言葉。後世の創作ともいわれるが、ダービーオーナーになる難しさを端的に表現した名フレーズとして、競馬ファンの間に浸透している。