【弥生賞】アスクビクターモア 重賞初制覇 ディープインパクト産駒が通算7勝目

2022年3月7日 05:30

重賞初制覇を果たしたアスクビクターモア(左端)

 皐月賞TR「第59回弥生賞ディープインパクト記念」が6日、中山競馬場で行われ、3番人気アスクビクターモア(牡=田村)が田辺裕信(38)に導かれ重賞初制覇を飾った。レース名に冠されているディープインパクトは産駒が同重賞7勝目。一方、昨年の最優秀2歳牡馬で無敗の4連勝を狙った1番人気ドウデュースは首差2着。3着ボーンディスウェイまでが皐月賞(4月17日、中山)の優先出走権を手にした。

 3月とは思えない北風が吹く中山。

 寒い。でも熱い。熱く血が騒ぐ――。

 メンバーで唯一、ディープインパクトを父に持つアスクビクターモアが楽な手応えで4角を回った。突き放す。風を切り、坂を越える。迫って来たのはドウデュース。唯一ディープの背中を知る武豊が懸命に追うが届かない。振り切った。田辺は「遅い流れで脚がたまったので、直線いい手応えで向いた。じりじりと迫って来る強い馬の気配を感じていたが、しのげそうだなと思った」。偉大な父の名が入ったレースで初重賞Vに手が届いた。

 決してスムーズではなかった。鞍上が振り返る。

 「先行馬がやり合ってペースが流れるかと思っていた。それを見ながら行きたかったが、形が決まるのが案外早かった。スローになりそうだな…と」

 掛かる癖があり遅い流れは痛い誤算だが、腹をくくった。前に壁のない2番手の外。案の定行きたがったが、直線で脚は鈍らない。田村師がディープ産駒を「気性が前向きで引っ掛かっても、距離も持ってしまう」と評した通り。ディープ産駒の特長はスピードと瞬発力。のみならず高速クルーズを可能とするタフさを備える産駒もいる。アスクビクターモアがそうだ。

 「エンジンがズバぬけている。厩舎に来た時からそうだった。心肺機能が違う」と田村師。「見栄えはきゃしゃだが、体を大きく使って身体能力が高い」と田辺。切れ味でなく、破壊力で勝負するディープ産駒。前受けでG1を勝つディープ産駒は、一流に超が付く馬が多い。そこに名を連ねられる可能性を秘める。

 父は05年弥生賞を勝って3冠。産駒はこのレース7勝目で中には16年ダービーを勝ったマカヒキもいる。アスクビクターモアの今後は?指揮官は明快だ。「掛かるし、コーナー4回でごまかせるのでこのコースが合っている。このレースを狙っていた」。これで中山2000メートルは2戦2勝。ならば同舞台の皐月賞もベストパフォーマンスが保証されている。本番は今回破った2歳チャンプも反撃を期し、メンバーはさらにそろうが、こちらも伸びしろ十分。田辺が「メンタルが落ち着くとさらにいい。まだまだ成長する余地があるし、楽しみ」と言えば、田村師も「粗削りで完成されていなくて、これだから。期待を抱かせる」と野心を隠さない。皐月賞に全力投球。それは偉大な父が歩んだ道をたどることにもなる。 

 アスクビクターモア 父ディープインパクト 母カルティカ(母の父レインボウクエスト)牡3歳 19年4月1日生まれ 美浦・田村厩舎所属 馬主・廣崎利洋HD 生産者・北海道千歳市社台ファーム 戦績5戦3勝(重賞初勝利) 総獲得賞金7350万8000円。馬名の由来は冠名+勝者+より多くの。

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