【NHKマイルC】ダノンスコーピオン95点 トモより高い発達キ甲、見違えるほど頼もしく
2022年5月3日 05:30 混戦G1に断を下すのは背比べでも負けない馬体の成長力だ。鈴木康弘元調教師(78)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第27回NHKマイルC(8日、東京)ではセリフォスと共にダノンスコーピオンをトップ採点した。達眼が捉えたのはトモより高くなったキ甲。体高アップで3歳短距離界の頂点に立つ構えだ。
こどもの日に合わせて2人の幼い孫に何かプレゼントを贈ってやろうと玩具店に立ち寄ると、懐かしい童謡が店内に流れています。♪柱のきずは おととしの 五月五日の 背くらべ ちまきたべたべ 兄さんが 計ってくれた 背のたけ…。大正時代から歌い継がれてきた「背比べ」(作詞・海野厚)。端午の節句(5月5日)に合わせて年の離れた兄に背丈を測ってもらった弟の成長ぶりが歌詞になっています。
端午の節句の週にゲートインするNHKマイルC。その有力候補ダノンスコーピオンもしばらく見ないうちに背が伸びました。馬の背丈(体高)は蹄の先からキ甲(首と背中の間の膨らみ)までの長さで示しますが、その背丈の頂点にあたるキ甲が昨年の朝日杯FS時よりも大きくなっている。発達したことでトモよりも高い位置に屹立(きつりつ)しています。キ甲の成長に合わせて首差しもサラブレッドらしく奇麗に抜けている。胸前の筋肉量も増えて、2歳時とは見違えるほどたくましくなりました。
前肢だけではありません。トモ(後肢)も明らかにボリュームアップした。数年前、孫の初節句に贈った五月人形のような分厚い筋肉の鎧(よろい)をまとっています。成長期とはいえ、朝日杯FSからわずか4カ月半の間にこれほど変わるケースは珍しい。前走・アーリントンCから中2週のローテーションでもフックラと見せている。頼もしい体つきです。
私の孫もそうですが、寝る子は育ちます。食べる子も育つ。ダノンスコーピオンは顎っぱりがいい。食欲旺盛なのでしょう。よく食べて、よく寝て、よく運動する。馬はさすがにチマキまで食べませんが、体づくりの基本は人と同じです。
ただし、気性は幼く映ります。四肢の置き方が定まらないまま、ハミにじゃれついています。大人びた立ち姿のセリフォスを見習ってどっしりと立ってほしいが、体の成長度はこちらに軍配が上がります。
屋根より高い こいのぼり…。玩具店でこどもの日のプレゼントを選んでいると、「背比べ」に続いて童謡「こいのぼり」(作詞・近藤宮子)が流れてきました。トモより高いキ甲。やがて竜に変わるこいのぼりのように成長一途の3歳牡馬です。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の78歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。