【書く書くしかじか】スプリント界元王者ピクシーナイトの復活期待

2023年2月1日 10:00

火曜朝、調教を終えて馬房でくつろぐピクシーナイト(牡5=音無)

 1月29日に行われた23年最初の芝1200メートル重賞・シルクロードSは4歳勢が上位人気を占め、勝ったのは4歳牝馬ナムラクレアだった。世代交代の早い短距離界。春のスプリント王を決めるG1高松宮記念(3月26日、中京)でも若い4歳勢が中心になりそうだ。

 そんな中、元王者が栗東に戻って来た。シルクロードS前日の28日、ピクシーナイトがトレセンに帰厩。デビューから福永がコンビを組み、21年スプリンターズSは0秒3差をつける快勝で年長馬を圧倒した。3歳馬がスプリンターズSを0秒3差以上つけて勝ったのは97年タイキシャトル以来(12月開催)。まさしくスプリント界の新星となった。

 勢いに乗って挑戦した21年の香港スプリント。まさかのアクシデントに見舞われた。勝負どころで故障した先行馬に巻き込まれ落馬。レース後、すぐにエックス線検査を受けたところ左前脚の橈(とう)側手根骨に剥離骨折が判明した。帰国後に栗東トレセン診療所で約3時間半の手術は無事終了。そこから長い道のりとなったが陣営は焦らず放牧先でじっくり時間をかけ、復帰へ向けた調整を進めてきた。

 帰厩した翌日29日から坂路で調教を開始。31日朝も元気いっぱいに駆け上がった。迫力満点の馬体からは王者の風格が漂う。久々に担当馬と再会した蛭田助手は「体はもっと余裕のある感じで帰ってくるのかなと思ったけど、牧場の方でも乗ってもらっていたみたい。乗った雰囲気は以前より気が乗っている感じですが、やっぱりいい背中をしてます」と感触を口にする。

 リンカーン、ヴィクトリー、アリストテレスなど数々の重賞ホースを手がけてきた腕利き助手が以前から絶賛する乗り味。「戻って来てくれてうれしい半面、過度に期待しないように慎重に進めていければ」と気を引き締める。「ナムラクレアを担当している疋田厩務員とは競馬学校の同期なんですよ。あの牝馬も根性ありますよね」と若い世代の台頭を気にしながらも「まだ調教2日目ですし、これからですから」と少しずつ前へ進んでいく構えだ。

 復帰に向けて、まずは2日にゲート試験を受ける予定。管理する音無師は「試験に受かれば調教を進めながら目標の高松宮記念に向けて、どうするか決めていきたい」と見通しを語った。落馬のアクシデントで長期休養を余儀なくされたが、着実に一歩ずつ前へ進んでいる。今後もピクシーナイトに注目していきたい。

 ◇寺下 厚司(てらした・あつし)1983年(昭58)10月22日生まれ、京都市出身の39歳。大阪大学工学部卒業、東京大学大学院中退。09年秋から競馬担当(東京→大阪)。ベスト推しホースはG1で惜しくも2着3回だったリンカーン。

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2023年2月1日のニュース