【高松宮記念】12番人気ファストフォース 5年目団野とともにG1初制覇

2023年3月27日 05:18

<高松宮記念>直線で抜け出し勝利するファストフォースとゴール前でガッツポーズの団野騎手(撮影・亀井 直樹)

 今年もタフな芝に高配の花が咲いた。4年連続の道悪となった春の短距離王決定戦「第53回高松宮記念」は26日、中京競馬場で行われ、12番人気ファストフォース(牡7=西村)が差し切り、G1初制覇を決めた。デビュー5年目の団野大成(22)、管理する西村真幸師(47)も開業9年目で初のG1奪取。2着に2番人気ナムラクレア、3着に13番人気トゥラヴェスーラが入り、3連単は66万円超えの波乱となった。

 勝利を確信した瞬間に思いがはじけた。ゴール直前に団野が馬上で体を起こし、左腕で力強くガッツポーズ。降りしきる雨を切り裂くように、気迫のステッキでファストフォースを鼓舞し、追いすがるナムラクレアを1馬身差で振り切り、G1初勝利のゴールに飛び込んだ。雨と汗にまみれた泥だらけの勝負服は大願成就の勲章だ。団野は「ずっと獲りたかったタイトルなので、勝てて良かったです」と喜びをかみしめた。

 前日から降り続く雨で一日中、不良馬場。芝の内側が荒れ、伸びにくくなった馬場傾向を確認し「外枠を生かす競馬をしようと。内から4、5頭分のところがいいと思っていました」。中団外めから直線、馬群を割って抜け出し、あとは懸命に追い続けるだけ。手応え良く伸びたものの、外にヨレてアグリの進路を妨げてしまった点については「挟んでしまい本当に申し訳ないです。今思うと手放しでは喜べないです」とレース後は反省しきり。歓喜と悔恨が入り交じった。

 昨秋にG1ジョッキーになった坂井、荻野極ら20代の先輩騎手に続くように、団野も同期では一番乗りとなるタイトルを手にした。ただ、昨年は同期の岩田望が年間100勝を達成する一方で、自身は落馬負傷などもあり、勝ち星は伸び悩んだ。苦しい期間を過ごす中、昨年のセントウルS(2着)で初コンビを組んだのがこの馬だ。中間の追い切りで半年間の成長を感じ取り、返し馬で感触を確かめると「ああ、いいな」。もう持ち味を出し切ることだけに集中していた。

 西村師も7歳春を迎えた愛馬の頑張りに目尻を下げっぱなし。検量室前で感無量の表情を見せた。3歳夏時点では中央で勝ち星を挙げられず門別へ。約1年後、栗東に再転厩。そこから軌道に乗り、5歳時にはサマースプリントシリーズ王者にもなった。それでも「能力は凄くあるんですけど脚元に弱さがあって坂路でしか調教できず、なかなか絞れなくて…」と当時を振り返る。その後、脚元が安定し、調教量を増やせたことが躍進につながった。体重は前走・シルクロードS(2着)から8キロ減の518キロ。「素軽い感じで牧場から帰ってきてくれて、調整しやすかったです」と目を細めた。

 今後については「オーナーと相談しながら」とのことで未定だが、もう脇役とは言わせない。完成期を迎えた7歳の新王者がスプリント界を盛り上げていく。 

 ファストフォース 父ロードカナロア 母ラッシュライフ(母の父サクラバクシンオー)16年5月9日生まれ 牡7歳 栗東・西村厩舎所属 馬主・安原浩司氏 生産者・北海道浦河町の三嶋牧場 戦績29戦7勝(重賞2勝目) 総獲得賞金3億1384万7000円。馬名の由来は第一の力。

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