【日本ダービー】スキルヴィングが扉を開く 青葉賞馬ジンクス打破へ ラスト11秒2
2023年5月25日 05:30 競馬の祭典「第90回日本ダービー」の最終追い切りが24日、東西トレセンで行われた。青葉賞からダービーを勝った馬はいないが、今年の青葉賞勝ち馬スキルヴィング(牡3=木村)は、あえてそのローテーションを選んだ。木村哲也調教師(50)が入魂の仕上げで、美浦ウッドチップコースの追い切りも万全だ。枠順は25日、確定する。
94年の重賞昇格後、77頭が本番ダービーで敗れてきた青葉賞組。「青葉賞組はダービーに勝てない」という不名誉なジンクスまで背負うトライアルだが、木村師は前を向く。
「多くのホースマンがダービーを獲るためにチャレンジしてきた。新しい扉を開ければ、と思っています」
青葉賞のメリットはダービーと同じ東京芝2400メートルの舞台。本番の試走としてこれ以上はない。デメリットは「中3週」のタイトな間隔と言われる。
メリットを享受しつつ、デメリットを緩和する。木村師は20年青葉賞勝ち馬オーソリティなど、これまで6頭の管理馬を青葉賞に出走させた。その経験を生かした解決策がローテーションだ。スキルヴィングは3歳戦を2月ゆりかもめ賞(1着)から始動し、皐月賞はパス。ゆとりのあるローテーションを組んだ。「クラシックは“削り合い”の側面もある。風船を膨らませて臨んだ青葉賞の後も、しぼむことなく維持できているのは頼もしい。過去にいっぱい失敗しましたので」
まだ3歳になって2戦。これまでダービーで好走した他の青葉賞勝ち馬以下のキャリア。中3週の間隔でも調教に手加減はいらない。スキルヴィングの姿から活気があふれた。
カーペンタリア(4歳3勝クラス)、マローディープ(3歳未勝利)と併せた最終リハ。力む様子もなくスムーズに向いた直線は、実戦さながら真ん中へ。軽く仕掛けられると力強い伸び脚。1000メートル67秒8~ラスト200メートル11秒2で外マローディープと並んでフィニッシュ。
木村師は「予定通りうまくいってホッとしています。先週、今週とハードに映ったかもしれないが、それだけ十二分に(攻められるだけの)スペースがあったということ」と納得の口ぶり。主戦のルメールが「青葉賞は半馬身差だけど、それ以上に楽に勝ったのでダメージはない。レースを使うごとに良くなっている」と話していることも、このローテーションが成功したことを裏付ける。
木村師とルメールは昨年ダービーをイクイノックスで2着惜敗。木村師は「私のキャリアで一生、背負っていくもので拭い去れない。それでも“日本ダービー”というフレーズが、自分を奮い立たせてくれた」と、今年こそと闘志をあふれさせた。ルメールは「去年からダービー馬になれると思っていた」と自信を隠さない。新機軸のローテーションを確立し、ダービーの歴史に新たな一ページを刻んでみせる。