【安田記念】今浪厩務員 ソダシで有終Vへ 今月末に引退の64歳「強さを見てもらいたい」

2023年6月2日 05:30

ソダシの顔をなでる今浪厩務員(撮影・亀井 直樹) 

 ベテラン厩務員の競馬人生の集大成へ。G16勝ゴールドシップなど数々の名馬を手がけた今浪隆利厩務員(64)が定年を間近に控え、白毛馬ソダシとのコンビでラストG1「第73回安田記念」に挑戦。相思相愛のベストパートナーとG14勝目を目指す。同レースは2日に枠順が決まる。

 時折見せる表情がどこか寂しそう。今浪厩務員は65歳の誕生日となる9月20日で定年だが、体調を考慮し、前倒しで6月末をもって引退する。G13勝のソダシは安田記念後は放牧に出て秋に備える予定のため、愛馬と挑む最後のレース。今浪厩務員は「ヴィクトリアマイル(2着)が終わった後、次が最後だなと…。ソダシが引退するまで担当を続けたかった。日に日に寂しさがあふれ出てきますね」としみじみと語る。

 16歳で競馬サークルの門を叩き、強い信念を持ち続けて馬づくりに励んできた。その努力が報われたのが、中尾正厩舎に所属していた86年。京阪杯で初めて重賞を勝ったシングルロマンだった。「ゴールした瞬間は本当にうれしかった。この仕事をやっていて良かったと思いました」と懐かしむ。09年に中尾厩舎が解散。同年に開業した須貝厩舎へ移籍後に出合ったのがゴールドシップ。厩務員人生の大きな転機となった。「初めて見た時からいい馬だった。デビュー当初はおとなしかったし、乗り運動も俺がしていたんだよ(笑い)」と当時を振り返る。12年皐月賞、菊花賞、有馬記念などG16勝。「強烈な個性を持っていた。普段の調教ではいろいろ悩むことがあったけど、海外(14年凱旋門賞14着)に行かせてもらったし、たくさんの思い出がある。これだけの馬に携われたことは厩務員冥利(みょうり)に尽きます」と笑顔を見せた。

 最終追い切りから一夜明けた木曜朝も“最終決戦”に向け入念に愛馬をケア。「当日、無事にレースへ送り出したい。そして、無事に厩舎へ帰ってきてほしいね。ソダシの強さをファンに見てもらいたいですね」と期待を寄せた。定年後は趣味の温泉巡りや北海道へゴールドシップに合いに行く予定だという。「今後はヘルパー(補充員)もできればやってみたいと思っています」と馬への愛情は人一倍強い。厩務員生活の集大成へ。愛馬とともに決戦の地・府中へ向かう。

 ◇今浪 隆利(いまなみ・たかとし)1958年(昭33)9月20日生まれ、福岡県出身の64歳。名古屋競馬、北海道の優駿牧場での勤務を経てJRA厩務員に。栗東・内藤繁春、中尾正厩舎でキャリアを積み、シングルロマンの86年京阪杯で重賞初勝利。中尾厩舎の解散に伴い、09年に開業した須貝厩舎へ。ゴールドシップ(G16勝)、レッドリヴェール(13年阪神JF)などを担当し、JRA・G110勝。

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