【安田記念】蛯名正師 レッドモンレーヴで恩返しV 藤沢氏から受け継いだ信念と馬で初G1つかむ
2023年6月2日 05:28 蛯名正義師(54)は名伯楽・藤沢和雄元調教師から引き継いだレッドモンレーヴでG1初制覇を狙う。
馬本位の調教。蛯名正師はひたすらレッドモンレーヴの気持ちに寄り添い続ける。騎手時代の経験、そして開業前に研修した藤沢和雄元調教師から受け継いだポリシー。木曜朝、蛯名正師はじっくりと乗り運動をこなす愛馬を頼もしげに見つめた。「テンションが鍵になる馬。こちらの要望を押しつけるより、馬の気持ちを大切にしたい。体も大事だけど、それ以上に心が大切だから」
その信念が表れた水曜の最終追い。安田記念に出走する馬の中で唯一、芝コースで追い切った。「Wコースは雨でチップが軟らかくて、芝の方が状態が良かった」と指揮官。2走前・ダービー卿CT(7着)は発走前から走る気をなくしただけに、馬が気持ちよく走れる条件を優先した。オーバーラップするのは馬の個性、馬場状態から柔軟な調教メニューを考え続けた藤沢和師の姿。蛯名正師は「藤沢先生も(芝コースを)使っていましたからね。坂路が(改修工事で)閉まっているので、いろいろ工夫しながらできる限りのことをやりたい」と話した。
騎手時代は数々の名馬とともにJRA・G1を26勝。一頭一頭の調教から密に携わり、“馬をつくれる騎手”として名をはせた。「アパパネ(10年牝馬3冠)、マリアライト(15年エリザベス女王杯、16年宝塚記念V)もデビュー前は一筋縄ではいかなかった。そういう馬たちを成長させながら一緒に戦えたのは調教師としても財産になっている」。気持ちの繊細な牝馬と多くのタイトルを手にできたのが何よりの勲章だ。
くしくも安田記念は藤沢和師が97年タイキブリザード、98年タイキシャトル、20年グランアレグリアで3勝をマークしたG1。周囲はドラマを望むが蛯名正師は冷静。「多くのつながりを感じますが、あまり意識せず、いつも通りにやりたい。馬にとっては関係ないですし、人が気負い過ぎるのは良くないから」と、穏やかに話す。師と仰ぐ名伯楽から引き継いだ愛馬と挑むG1舞台。レジェンドの教えを胸に、トレーナーとしての信念を貫いてゲートインを待つ。
≪藤沢氏最後の勝利 記念レースでもV≫レッドモンレーヴは、藤沢和雄元調教師の現役最後の勝ち馬(昨年2月27日の中山7R、JRA通算1570勝目)。厩舎解散後、蛯名正厩舎所属となり、移籍初戦が藤沢氏の殿堂入りを記念したレジェンドトレーナーC(昨年10月)。見事な差し切りVを決め、表彰式では藤沢氏から蛯名正師に記念カップが手渡された。蛯名正師の騎手として初G1制覇は96年天皇賞・秋。藤沢氏が管理したバブルガムフェローで成し遂げた。2人の確かな絆の象徴とも言えるモンレーヴで、今度は調教師としてのG1初Vを目指す。