コントレイルが伝えるディープの血

2023年7月19日 10:30

5億2000万円で落札されたコントレイル産駒のコンヴィクション2の2023(手前)(C)Japan Racing Horse Association

 ▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の新谷尚太(46)が担当する。今月10、11日に北海道苫小牧市のノーザンホースパークで行われた日本最大級の競走馬セール「セレクトセール2023」を取材。2日間の総売り上げは新記録。大盛況に終わったセリの話題の中心は新種牡馬コントレイルだった。

 今月10、11日はセレクトセールへ初めて出張した。普段はトレセンを拠点に取材をしている記者は、まず北海道の広大な土地に感動。そして広い敷地内を駆け回る子馬の姿に胸を打たれた。無事に競走馬としてデビューする日を楽しみに待ちたい。

 生産界は大きな変化を迎えている。日本競馬に偉大な功績を残したディープインパクト、キングカメハメハ、ハーツクライ産駒の名前がセリから消えた。それでも血はしっかりと受け継がれている。ディープインパクトの後継種牡馬として注目が集まった20年3冠馬コントレイル。セリ2日目の当歳セッションに20頭(欠場1頭)の産駒が上場された。

 1歳とは違い、当歳はオークション前に一斉展示がある。自分も時間の許す限り子馬を見て回った。まだ生まれて数カ月の子馬たち。母親に甘えたり、人の多さに驚く馬が目立つ中、コントレイル産駒の多くは凜(りん)とした、たたずまい。何事にも動じない雰囲気は現役時代の父をほうふつさせた。グリーンチャンネルのパドック解説を務めている自分が一番気になったのはフィジカル。父の遺伝子は体つきにもしっかりと表れていた。小柄でも見栄えのする馬体。歩かせると柔らかい。バネがあって、豊かなスピードがありそうな雰囲気はディープインパクトに共通する点だろう。コントレイルは偉大なディープの血をしっかりと産駒に伝えている。

 現役時代に管理していた矢作師は産駒の特徴について「脚が真っすぐで、小柄でも肉付きがいい。顔が小さいところや(馬体の)形もお父さんのいいところをしっかり受け継いでいる。(産駒の)評判がいいと聞くとやっぱりうれしいね」と笑顔で語った。けい養されている社台スタリオンステーションの徳武英介場長は「骨格がしっかりしているが、ディープの可動域の広さや身のこなしの柔らかさがある。体の成長で大きな変化をしない。生まれたときの形から成長が想像しやすい。バランスのいい馬はずっとそのまま(バランスを保って)成長していくと思います」とイメージした。ディープインパクトの最高傑作だったコントレイル。現役生活でも強烈な輝きを放ったが、ポスト・ディープとして最高の種牡馬デビューを迎えた。

 ◇新谷 尚太(しんたに・しょうた)1977年(昭52)4月26日生まれ、大阪府出身の46歳。18年5月から園田競馬を担当、同年10月に中央競馬担当にコンバート。前職は専門紙「競馬ニホン」の時計班。

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