トレセン親子体験で目指せホースマン
2023年8月9日 10:55 ▼日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の小林篤尚(46)が担当する。3日に栗東で行われた「夏休みトレセン親子体験ツアー」に同行、イベントの様子をリポートする。なお、各プログラムの写真や動画はスポニチ競馬WebのX(旧ツイッター)に掲載する。
コロナ禍が解け、4年ぶりにトレセンでの親子体験ツアーが戻ってきた。65件の応募があり、7組19人が参加。人数が限られているのはマイクロバスでの移動があるため。栗東トレセンの中を大型バスで通行するのは厳しい。午前8時30分に集合、トレセンのそばにある乗馬苑での乗馬体験からスタート。子供たちは厳しい暑さの中で馬との触れ合いを楽しみ、スマホが向けられると笑顔を送った。参加した森田七海ちゃん(9)は「馬に乗れたのが一番楽しかった!あんなに大きな馬に乗ったのは初めて。凄く(目線が)高いなと思いました」とにっこり。
いよいよトレセンの中へ。調教コースを見学した後、実際に坂路コースを走った。追走していた親御さんは「馬ってこんなにきついトレーニングをしているんですね」と汗をぬぐいながらも力走した。この後は蹄鉄作りの実演見学から蹄鉄のコースター作りを体験。そこから安田隆行厩舎の見学へ。安田隆師の話を聞きながら、実際の競走馬を間近で見ることができた。「大きい!カワイイ!」など、さまざまな声が飛んだ。安田隆師はコロナ前を含め、10回以上は受け入れてきたとのこと。子供からの質問に丁寧に答え、記念撮影に納まった。「ダノンスマッシュのクオカード」プレゼントもあった。最後に馬運車を見学、午後0時30分に終了した。
七海ちゃんの父親で、大阪府八尾市から家族4人で参加した敬之さん(45)は「僕もめちゃくちゃ楽しかったです。坂路を走れるなんて絶対にないですからね。犬や猫などは間近ですけど、馬はなかなか近くで見ることもできない。子供の感性もまた変わってくると思うし、馬に乗った後に“ここで働こうかな!”って言ってましたよ」と競馬歴30年以上のパパは満点な一日を振り返った。
企画の意図も後進につなぐ意味合いが大きい。ツアーのアテンドを務めた栗東トレセン総務課の中川萌々恵さんは「競馬にもっと親しみを持っていただければと思ってやっています。お子さまには今後、競馬サークルの担い手になってくれれば。積極的に質問をしてくれたり、目が輝いていたのはうれしかったですね。これからも以前と同じように、続けていきたいと思っています」と語った。
このイベントは子供たちの学校が休みに入る春と夏の年2回を予定、美浦トレセンでも同様に行われている。記者の私でも知らないことや入ったことのなかった施設もあり、大人でも十分に楽しめる。これだけ盛りだくさんのプログラムがあって無料なのもいい。インタビューに答えてくれたお父さんの「これからも続けてほしいです」という言葉にいたく同感。この経験をきっかけに、未来へ羽ばたくホースマンが出てきてくれればと願う。
◇小林 篤尚(こばやし・あつひさ)1977年(昭52)3月31日生まれ、大阪府枚方市出身の46歳。04年からボートレース担当。16年から中央競馬へ。15年に尼崎ボートで小学生を対象に「1日記者体験」の講師をした経験がある。