【チャンピオンズC】ハギノアレグリアス95点 タテガミ盛り上がるほど太い首

2023年11月28日 05:30

ハギノアレグリアス

 天下分け目の決戦に台頭するのは砂の四天王だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第24回チャンピオンズC(12月3日、中京)ではハギノアレグリアス、セラフィックコール、レモンポップ、メイショウハリオに最高点の95点を付けた。中でも達眼が捉えたのは徳川家康の腹心、井伊直政の猛将ぶりを想起させるハギノアレグリアス。上位4頭を徳川四天王になぞらえながら解説する。

 NHK大河ドラマ「どうする家康」も天下分け目の関ケ原を終えて終盤にさしかかりました。家康の天下獲りを腹心の家臣として支えたのが徳川四天王と呼ばれる武将です。中でも勇猛さで知られたのが俳優・板垣李光人演じる井伊直政。赤備えを率いて最前線で長やりを振り回しながら敵陣へ突っ込む屈強ぶりから「井伊の赤鬼」の異名を取りました。だが、平時の直政は戦場でのたけだけしい姿とは一転、落ち着き払った物静かな人だったとか。

 天下分け目のダート決戦・チャンピオンズC。馬体診断で最高点(95点)をつけた有力馬4頭を“砂の四天王”とするなら、その一角をなすハギノアレグリアスは井伊直政タイプです。ひと目でダート馬だと分かる屈強な体つき。490キロ前後の馬体重以上にパワーを感じさせます。首の付け根はタテガミが盛り上がって映るほど太い。その首の付け根につながるキ甲(首と背中の間の膨らみ)も特大。まだキ甲が抜け切っていないセラフィックコールとは対照的な完成した姿です。たくましい前肢とバランスを取るように腰から尻、臀部(でんぶ)にかけても立派な筋肉を付けている。そのため立ち姿には迫力と安定感があります。

 そんな勇猛な体つきとは一転して、顔つきは穏やかで物静か。ゆったりとハミを受けています。精悍(せいかん)な面構えのメイショウハリオとは対照的な優男ぶり。肖像画に描かれた平時の直政のように優しい顔をしています。競馬に向かうと、赤鬼のような顔に変わるのはオンとオフの切り替えが利く気性だからでしょう。

 直政はケガの絶えない武将でしたが、ハギノアレグリアスも両前屈腱炎を発症して2年近く戦列を離れていました。右前蹄の狭窄(きょうさく=すぼまって狭い状態)のせいでしょう。復帰から1年半たった今回の馬体写真を見ると…。右前肢は左前肢の陰で判然としませんが、左前肢は裏筋(屈腱)、中筋(けいじん帯)とも問題ありません。

 直政が「おんな城主」井伊直虎のおいっ子なら、ハギノアレグリアスはダービー牝馬ウオッカを出したダービー馬タニノギムレットのおいに当たる血統。そんな母系の影響を受けて、アレグリアスも背中に奥行きのある中距離体形です。1800メートルは最適。短距離体形のレモンポップのような距離不安もありません。関ケ原の中心的存在だった井伊直政よろしく、馬の直政も天下分け目の大一番で台風の目になります。 (NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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