【チャンピオンズC】レモンポップ 圧逃V 史上4頭目の同一年JRAダートG1完全制覇

2023年12月4日 05:30

<チャンピオンズC>レモンポップの馬上で優勝を喜ぶ坂井瑠星騎手 (撮影・亀井 直樹) 

 最強ダート王が誕生した。「第24回チャンピオンズC」は3日、中京競馬場で行われた。坂井瑠星(26)騎乗の1番人気レモンポップが逃げ切りV。史上4頭目の同一年JRAダートG1ダブル制覇を達成した。重賞は前走の南部杯に続く4勝目。2着に12番人気ウィルソンテソーロ、3着には9番人気ドゥラエレーデが入線して3連単は190万円超の大波乱となった。

 神様は試練を与えた。レモンポップは中京ダート1800メートルで不利とされる大外15番枠。中京開催の過去9回で14番枠より外は【0・0・0・24】。坂井は「逃げはたくさん考えた中の一つ。距離不安だったので、行き切ってラチ沿いを取る形がいいかなと。水曜日まではそう思っていました。でも、枠順が出た時に“これは厳しいな”と」と述懐する。前走から200メートル延長、1800メートルは未知の世界。スタンド前発走も初めてだった。そんな心配はスタートをして希望に変わる。

 出足が速い。グングンと前へ。1角までにハナを取り切った。前半1000メートルの入りは60秒9。鞍上は「1分1秒で行けたらと思っていました。イメージ通りです」と振り返る。直線も独り旅。史上4頭目となる同一年ダートG1完全制覇を決めた。東京1600メートルのフェブラリーSと距離は200メートルの違いとはいえ、コースレイアウトが全く違う。大きな価値を持つ勲章だ。ゴール後は右腕を高々と上げてファンに応えた。

 「堂々とチャンピオンと言っていいと思います。初めてのことが多かったし、挑戦だなと。ドバイの1200メートル(ドバイゴールデンシャヒーン10着)を除いたら、直線を向いた時は一番手応えがなかったです。コーナーがいつもより多いし、後続のプレッシャーもあった。それでも残ってくれたのは能力の高さ。想像を超える走りをしてくれました」

 パワーアップを遂げてつかんだ年間王者の誇り。この夏を境に成長が見えた。田中博師は「体形が変わってきました。2歳のころからトモが立派な馬だったけど、前躯が後躯に追いついていないなと。夏を境に肩周りが発達して、(後ろに)追いついてきた感じ。前躯が固まってきたので、こちらのやりたいことができるようになりました」と充実期を迎えた。

 大きな壁を打ち破り、王者の道はさらに広がった。指揮官は「選択肢の幅は広がりました。いいスピードを持っていますし、海外もその一つにはあります」と見通しを語った。デビューから唯一連対を外したのが3走前のドバイ。坂井も「春に悔しい思いもしたので、リベンジしたいという思いはあります。また乗せていただけたら、頑張るだけです」と目を輝かせた。再び海の向こうで立つ日が来るのか。完成の域に入った最強ダート王が、来年も力強い歩みを続ける。

 ○…オーナーであるゴドルフィンのJRA・G1制覇はフェブラリーSに続く今年2勝目で通算5勝目。ダーレー・ジャパンの福田洋行取締役も感無量の面持ち。「いくつもの課題がありながら完璧なレース。強い競馬だったと思います。ジョッキーも自信を持って乗ってくれました」と安堵(あんど)の笑み。距離を克服したことで活躍の領域が広がった。「サウジに(連覇がかかる)フェブラリーS。いろいろな選択肢がありますね。ぜいたくな悩みです。夢が広がりますね」と話した。

 レモンポップ 父レモンドロップキッド 母アンリーチエイブル(母の父ジャイアンツコーズウェイ)18年2月15日生まれ 牡5歳 美浦・田中博厩舎所属 馬主・ゴドルフィン 生産者・米国のオリヴァー・S・タイト夫妻 戦績14戦10勝(うち地方1戦1勝、海外1戦0勝、重賞4勝目) 総獲得賞金4億8175万6000円 馬名はレモンスカッシュの意味。

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