【朝日杯FS】シュトラウス95点 黒光りする黒鹿毛の被毛に強じんな鋼の筋肉
2023年12月12日 05:30 2歳マイル王にふさわしいのは、「鋼」、「虎」、「岩」の3強ボディーだ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第75回朝日杯FS(17日、阪神)ではシュトラウス、ジャンタルマンタル、セットアップの3頭に最高点の95点を付けた。
23年の世相を漢字一字で表す「今年の漢字」がきょう12日、京都の清水寺で発表されます。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘…。昨年に続き「戦」を選んだ人も多いでしょう。国内では物価、原材料、燃料費がことごとく高騰。猛暑日が続いた今夏の全国平均気温も統計開始以来最高とあって「高」を予想する人もいるでしょう。ジャニー喜多川氏による性加害問題、自民党派閥の政治資金パーティー問題なども含めて「乱」や「変」も候補でしょう。
朝日杯FSの有力候補を漢字一字で表すなら…。東京スポーツ杯2歳Sを勝ったシュトラウスは「鋼」です。黒鹿毛の馬体にとても強じんな筋肉を備えている。岩のような厚さやゴムのような柔らかさに乏しい半面、飛び抜けた強さがある。鉄より強度に優れた合金「鋼」に例えたくなる筋肉。520キロの馬体重ほど大きく見えないのはその鋼のような筋肉が全体に無駄なく、バランス良く付いているからです。ヒ腹が細めのすっきりとアカ抜けた中距離体形。父モーリスのガッチリしたマイラー体形と対照的ですが、筋肉の強さは父譲りです。
大きなキ甲(首と背中の間の膨らみ)は抜けています。完成度が高い。毛ヅヤも抜群。よほど体調がいいのでしょう。黒鹿毛の被毛がステンレス鋼のフライパンみたいに黒光りしています。
鋭い顔つきも鋼のボディーにふさわしい。鋼のナイフのように耳を鋭角に立てながら全身に力を入れている。前進気勢の強い、とても勝ち気な気性をうかがわせます。レースではいかに冷静に走れるか。折り合いが大きな課題になるでしょう。体形は中距離仕様でも気性は短距離仕様。2000メートルのホープフルSではなく、マイルの朝日杯FSに照準を合わせたのは正解だと思います。
別表の通り、昨年の朝日杯FSではダノンタッチダウン(2着)の馬体を「翔」の一字で表して100点満点をつけました。一昨年はドウデュース(1着)を「偉」と記して満点評価。4年前にはサリオス(1着)にも満点をつけました。今年は満点の馬が見当たりませんが、シュトラウスには最高点の95点。2歳マイル王にふさわしい黒い鋼のボディーです。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。