“幻のGⅠ馬”クリノガウディー復帰秒読み
2024年1月31日 10:30 日々トレセンや競馬場など現場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」は栗東取材班の田村達人(31)が担当する。22年春に右前脚の種子骨を骨折し、戦線離脱しているクリノガウディー(牡8=藤沢)が栗東に帰厩した。20年高松宮記念で1位入線も他馬の進路を妨害したとして4着降着となった幻のG1馬。復帰に向けて着々と調整を進めている。
22年高松宮記念16着を最後にレースから離れている幻のG1馬クリノガウディーが復帰に向けて先月14日、休養先の信楽牧場から栗東に帰厩した。藤沢師は「SNSでもファンの多い馬だから、しっかり復帰させて、また元気な姿を見てほしい」と思いを口にした。
一昨年の京王杯SCに向けての調整中に右前脚の種子骨を骨折し、戦線離脱した。無事に手術が成功し、その後は福島県いわき市「競走馬リハビリテーションセンター」に移動。ちょうど1年前に栗東に戻ってきたが今度は深管骨瘤(しんかんこつりゅう)を発症した。「リハビリ施設から直接、入厩させたので体力があり余っていて、稽古でも動き過ぎるぐらい元気だった。それが負担につながったと思う」と説明する。
再び振り出し。滋賀県甲賀市の信楽牧場で療養中は毎週のように藤沢師が自ら牧場に足を運び、現地スタッフらとコンタクトを取った。そして帰厩。翌日から坂路で乗り出しを始め、今月17日は坂路4F59秒1を刻み、帰厩後初めて4F60秒を切った。先週24日は4F58秒2と少しずつ時計を速くしている。藤沢師は「前回と違い、ゆっくり時間をかけて調整。牧場からずっと同じ獣医師さんが脚元をチェックしてくれて、骨折は完治している」と順調さを伝えつつ「馬のリズムで時計を詰めて2月中に(坂路)54、55秒台が理想かな」と目標を掲げた。
もう8歳。だが、厩舎の先輩である半兄クリノサンレオは10歳だった昨春まで現役を続け、半姉クリノカサットも8歳まで走った。息の長い血統だ。2歳時の18年朝日杯FSでは勝ち馬アドマイヤマーズに次ぐ2着。のちにG16勝した名牝グランアレグリア(3着)に先着した。当時の出走馬15頭で唯一のJRA現役馬となった。藤沢師は「まだ具体的なレースは決めないで、まずはしっかり馬をつくっていきたい」と慎重に調整を進めていく。1位入線→4着降着だった悲劇の20年高松宮記念から、もうすぐ4年がたとうとしている。幾多の苦難を乗り越え、再びターフへ。このまま順調に行けば、今春に復帰の可能性は十分ありそうだ。
◇田村 達人(たむら・たつと)1992年(平4)11月12日生まれ、大阪市城東区出身の31歳。高校卒業後に北海道新ひだか町ケイアイファームへ。育成&生産に携わる。予想スタイルは取材の感触。