【フェブラリーS】ガイアフォース95点 芝で砂で天下を獲る“二刀流”の首
2024年2月13日 05:30 長くて太い首差しが芝&ダート“二刀流”の証明だ。鈴木康弘元調教師(79)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第41回フェブラリーS(18日、東京)では、昨年JBCクラシックを制したキングズソードと共にダート初挑戦のガイアフォースをトップ採点した。達眼が捉えたのはガイアの首。芝、ダートの両G1を制した母の父クロフネ譲りの長さと太さを兼備した首差しだ。
北野武さんが監督、脚本を手がけた戦国スペクタクル映画「首」が昨秋公開され、話題を集めました。天下獲りを狙う戦国武将たちの野望を壮大なスケールで活写した時代劇。「首」とは辞書を引くまでもなく、生命、一番、最上位といった意味です。馬が走る上でも首は極めて重要な役割を担っている。芝馬に多い長い首は可動域を広げてスピードを生み出す。ダート馬に多い太い首はパワーを生む。芝&ダートの“二刀流”クロフネは太くて長い首の持ち主でした。
ガイアフォースがライバルと一線を画しているのも長くて太い両刀遣いの首です。ヨロイのような分厚い筋肉を備えながらカブトの前立(くわ形)のような長さもある。父キタサンブラックはキリンを思わせる細くて長い芝仕様の首の持ち主ですが、ガイアフォースは母の父クロフネの首を体現しています。
背中から後肢にかけての流麗なトップラインは父譲り。それでも、前肢を見ればクロフネのように上腕の筋肉が隆起しています。3歳時とは見違えるほどこの部位のボリュームが増しており、前肢をよりパワフルに伸縮できるでしょう。
いつも保護用のバンデージを着けて写真撮影に臨むようです。そのため、つなぎの形状は分かりませんが、他の部位が示すのは砂適性。特に前肢は一線級のダートホースと比べても見劣りしません。
芦毛の被毛は加齢とともに雪のように白くなりました。白すぎて毛ヅヤは見極めづらいが、腹部の毛が長くなっていません。体調に変動はないでしょう。その腹周りには少し余裕がありますが、今週の調教と栗東から東京競馬場へ長距離輸送で絞れるでしょう。胴が詰まり気味のマイラー体形。前進気勢の強そうな立ち姿もマイル向きです。後肢が浮いて見えるほど前肢に負重をかけています。
クロフネが芝のG1ウイナーに輝いたのは01年NHKマイルC。その年の秋にダート戦に転じると武蔵野S、JCダートを連勝しました。昨秋の天皇賞5着など芝のG1で好走してきたガイアフォース。そのダート初挑戦に勝算を膨らませるのもクロフネ譲りの両刀遣いの首です。
昨年のJRA賞最優秀ダート馬レモンポップと同特別賞ウシュバテソーロはそろってサウジ遠征中。ダート界の両横綱不在で戦国ムード高まる砂決戦とあれば、天下獲りも託せる有力候補です。(NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の79歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~2004年に日本調教師会会長。JRA通算795勝。重賞27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。