【追憶のフィリーズレビュー】95年ライデンリーダー 名物アナも言葉を失う、笠松の無敗牝馬の決め脚

2024年3月6日 06:45

4歳牝馬特別を制したライデンリーダー、鞍上は安藤勝己

 まだレース名が「4歳牝馬特別」だった頃の一戦だ。笠松競馬から10戦10勝のライデンリーダーが参戦。2番人気に推された。

 すでに笠松からは怪物オグリキャップが出て、東海の“虎の穴”的存在であることを知られていた。

 前年(94年)には5戦4勝で笠松から中央へと転籍したオグリキャップの妹オグリローマンが桜花賞を制していた。よって、笠松で10勝を挙げているなら、それなりの実力馬であることは予想できた。

 しかし、直線で見せた、うなるような決め手は想像のはるか上を行っていた。

 今もレースの様子はインターネット上で見ることができる。お薦めは関西テレビのVTRだ。同局のエースだった杉本清アナの実況は、見た者の驚きと興奮をダイレクトに伝えてくれる。

 「おおっと、来た来た来た!外からライデンリーダー来たぞ来たぞ来たぞ!」。直線半ば、ライデンリーダーを視界に入れると、杉本アナのテンションがいきなり上がった。

 珠玉の実況だと感じるのは、その後である。「抜けたー」「ライデン!」(2秒半ほど空白)「これは強い。恐れ入ったー」「何と何とライデンリーダー1着ー!」

 競馬実況における2秒半の空白は、なかなかである。それまでも杉本アナは競馬場の雰囲気を伝えるために、ゴール後、意識的に“間”をつくることはあった。ただ、このライデンリーダーの時は違うように感じた。

 言葉を失った。そう思えた。

 「ライデンリーダー1着ー!」の後も杉本アナは5秒ほど間を取った。そこで聞こえてくる京都競馬場のざわめきも、ゾクッと来るものがあった。

 どよめき、とはこのことだ。ああ、今、凄いものを見た、という雰囲気が四半世紀の年月を超えて伝わってくる。

 瞬間の情景を切り取ってきた杉本アナだが、言葉が出なかったことが、かえってライデンリーダーの非凡な凄みを伝えていた。

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