ジャックドール 復帰へ温泉治療!東樹所長「馬に合わせたリハビリで競馬に復帰させるのが我々の使命」

2024年7月17日 05:30

温泉に入りリラックスした様子のジャックドール

 夏本番はこれから!先週で幕を閉じた函館に替わり、今週末から札幌が開幕する。夏競馬はまだまだアツい。水曜の新企画「夏は自由研Q」第3弾は東京本社の後藤光志(28)が担当。秋の飛躍を見据えて多くの馬がしのぎを削る中、この夏を“充電期間”とする馬も多くいる。今回は福島県にある競走馬リハビリテーションセンターを訪問。温泉療法などを用いて故障馬の復帰を支える現場や、長期療養から復活を目指すG1馬の現状に迫った。

 福島県いわき市に故障馬の競走復帰をサポートする施設がある。「競走馬リハビリテーションセンター」。屈腱炎や骨折などで長期休養を必要とするサラブレッドがリハビリの日々を送っている。8日時点で14頭が療養中だ。

 緻密な検査、診断を基に復帰へのカリキュラムが組み立てられる。「こまめに検査をしているところがこの施設に預けていただくメリットです。2週間に1回、必ず精密検査している施設はなかなかないですから」と話すのは獣医師の東樹宏太所長(41)。同施設では調査研究において腱や靱帯(じんたい)の損傷を評価する最新の検査機器も導入。将来的に検査結果を疾病の早期発見やリハビリに生かせられるようにデータの蓄積を行っている。

 診断結果を基に、サラブレッドは施設内のさまざまな設備でリハビリを行う。その初期段階で用いられるのがウオーターウオーキングマシン。直径12・5メートル、水深約40センチの円形プール内を歩行させる機械だ。脚部をアイシングできるため、馬場調教後のクーリングダウンにも利用される。脚元の負担を減らしながら歩行訓練を行う際に使われるのはウオータートレッドミル。水中にベルトコンベヤーを備えた、水深120センチの水槽。浮力によって関節や腱への負担を約30%軽減しながら、速歩や常歩を行うことができる。

 いわきならではの“温泉療法”もある。敷地内には馬用の温浴場が併設。豊富な湯量を誇る地元のいわき湯本温泉から湯を引き込んでいる。リハビリを終えた馬たちが数日置きに入る“憩いの場”。東樹所長は「温泉浴により副交感神経活動が亢進(こうしん)し、リラックス効果が得られることがJRAの研究成果により明らかにされています。皮膚炎や蹄の状態に注意しながら入浴しています」と説明する。

 かつてはオグリキャップやテイエムオペラオー、近年ではデアリングタクトも利用した“名湯”。取材当日、そんな温泉でリラックスする名馬がいた。武豊とのコンビで昨年の大阪杯を制したジャックドール(牡6=藤岡)だ。1月に右前浅屈腱炎が判明。9カ月以上の休養を要する見込みとなっていた。同施設にやってきたのは2月28日。当初は引き運動など軽めの調整から始まり、5月下旬からはウオータートレッドミルでのリハビリがスタート。「強制的に体を動かせるマシンが多く、嫌がる馬もいるがそういったそぶりは全くない。トラブルなく順調に進んでいます」。復活を目指すG1馬の頼もしい姿に東樹所長の表情も明るい。

 地の利を生かして、故障馬を支える競走馬リハビリテーションセンター。「馬に合わせたリハビリを経て全頭、競馬に復帰させるというのが我々の使命」と東樹所長。これからも復帰を目指す馬たちの背中を押していく。

 ▽競走馬リハビリテーションセンター 63年「競走馬総合研究所 常磐支所」として設立。長期療養を必要とする故障馬を温泉療養などにより回復させ、競走に復帰させるとともに温泉療法の治療効果を研究することを目的とした。75年、日本で初めて馬用スイミングプールが開設。17年、施設の取り組みを関係者や世間に周知するため現在の呼称が追加された。一般見学も可能。日時は月~土曜の午前8時~午後5時(リハビリ実施時間は午前中のみ)。プールは5~10月の月~金曜の午後1時半から。見学料は無料。

 《焦らず回復待つ》ジャックドールを所有する前原敏行オーナーは「軽度(右前浅屈腱炎)だったので、順調に回復していると聞いています」と報告。今後については「藤岡先生と決めていきたい。G1を勝ってくれた馬ですし、焦ることなく大舞台に向かえればと思っています」と復帰を心待ちにしていた。

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