思い出に残るクィーンスプマンテ逃走劇

2024年11月8日 05:05

09年のエリザベス女王杯で直線半ばに向いても後続に大きな差を付け逃げる優勝したクィーンスプマンテ(左端)

 【競馬人生劇場・平松さとし】
 今週末、京都競馬場でエリザベス女王杯(G1)が行われる。

 個人的に最も思い出に残っているのは09年。手前みそで恐縮だが、当スポニチのコラム(東京版)で◎を打ったクィーンスプマンテが単勝77.1倍の穴にもかかわらず勝利。154万超の3連単も的中できた。

 騎乗していたのは田中博康現調教師。直前の京都大賞典でも騎乗し、道中は2番手。最後は9着に沈んだものの、直線ではいったん先頭に立ち上々の粘り腰を披露していた。

 「2番手からの競馬であれだけのパフォーマンスができたから、エリザベス女王杯では自分の形の“逃げ”を打とうと思いました」

 管理する小島茂之調教師に相談すると、同じ意見であることが分かった。

 こうして思い切って逃げた。

 「3コーナーでテイエムプリキュアが差を詰めてきた時は“もう少しゆっくり行かせてほしい”と思いました」

 しかし、その時こそ、勝利へ向けての歯車が回り出した瞬間だった。テイエムプリキュアが早めに仕掛けて来たことで、前を行く2頭と3番手以下の差が大きく開いた。圧倒的1番人気馬ブエナビスタの手綱をとっていた安藤勝己騎手(当時、引退)は後に「3コーナーで前の2頭は見えなかった」と話している。

 直線に向き、ターフビジョンに目をやると、そこには後続の馬群だけが映っていた。

 「自分と後ろとの差を確認したかったけど、それが分かりませんでした」

 だから「最後は必死に追った」と言う。すると、1度も他馬に先頭を譲ることなく、真っ先にゴールに飛び込んだ。

 「その瞬間、頭の中が真っ白になりました」

 転身した田中博康調教師は先週11月3日が終わった時点で関東リーディング。勝率は全国トップを独走。現地2日には米国のブリーダーズCターフ(G1)で管理するローシャムパークが2着と大活躍している。その原点ともいえるエリザベス女王杯。今年はどんなドラマが待っているだろう。
 (フリーライター)

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