【追憶の高松宮記念】06年オレハマッテルゼ キャリア初の電撃戦で頂点!音無師もオーナーも待ってたぜ

2025年3月26日 06:45

オレハマッテルゼで06年の高松宮記念を制した音無師(左から4人目)、騎乗は柴田善臣騎手

 3月4日をもって定年引退した音無秀孝師。栗東を代表する名調教師の1人だったが、G1初制覇が今回取り上げる06年高松宮記念だ。

 95年開業から11年を経てのビッグタイトル。「(03年菊花賞2着などの)リンカーンで何度かチャンスはあったんだけど、なかなか勝てずにいたからね。ここまで長かったですよ」。指揮官は正直な思いを吐露した。

 鞍上は柴田善臣。オレハマッテルゼには過去6度またがり、8Fの重賞で2着、7Fで3着。どこかもどかしさを感じ、音無師に提案した。「ラストの詰めが甘くなっている。1200メートル戦に使ってはどうか」。音無師も鞍上の進言を受け入れた。06年高松宮記念、未知の距離にチャレンジした。

 気合の入った柴田善。大一番で最高の騎乗を見せた。5番手付近で流れに乗り、3角でわずかに馬を前に出し、勝負どころで動きやすい位置を確保した。

 直線を向く。インから4頭目のスペースを確保した。そこからのギアの上がり方は凄かった。グイグイと伸び、残り100メートルで先頭。懸命の追い上げを見せるラインクラフトを首差、振り切った。

 「バッチリでした。全てうまくいきましたね」。満足げな表情で汗を拭う柴田善。00年高松宮記念(キングヘイロー)以来、丸6年ぶりのG1制覇。「6年か、長かったね。また同じ舞台で勝てたことはうれしいね」

 音無師は小田切有一オーナーの馬で初めてG1を制したことに運命を感じていた。騎手時代のG1制覇は85年オークス。小田切オーナー所有のノアノハコブネに騎乗。28頭立ての21番人気という超ダークホースを駆り、外から見事に差し切った。

 実は柴田善から距離短縮の打診を受けた時、小田切オーナーからも「距離の短いところを使えないか」との提案があった。周囲の後押しがあってのG1制覇であることを音無師は痛感していた。

 ちなみにオレハマッテルゼは「俺は待ってるぜ」とも「俺ハマってるぜ」とも読める。ノアノハコブネ以来のG1制覇に酔う小田切オーナーに報道陣が改めて馬名の由来を聞くと「石原裕次郎の映画からですよ」と明快に答えた。「音無先生の初G1は絶対に私の馬で、と思っていました」。オーナーも“待っていた”のだ。

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