【追憶の菊花賞】04年デルタブルース 岩田康騎手と角居師 競馬の歴史を塗り替えた男たちのG1初制覇

2025年10月22日 06:45

04年回菊花賞を制し、ガッツポーズをするデルタブルース騎乗の岩田康誠騎手

 岩田康誠騎手、当時園田競馬所属の30歳。8度目の騎乗でついに手にした中央G1だった。「やってもうた。自分でも何が何だか分からない。G1に乗せてもらえるだけで光栄なのに、こうして勝つなんて、とても信じられない」。お立ち台で殊勝に語った。

 51歳となった今でも見せる、思い切った騎乗だった。2周目の下り坂。この距離は初めてのデルタブルースに思い切ってゴーサインを出した。

 手綱をしごく。残り300メートルを切ったところで2番人気コスモバルクをかわして先頭だ。ホオキパウェーブ、オペラシチーも迫るが差を詰め切れない。ゴールの瞬間、岩田は左手を力強く握りしめた。

 「春の天皇賞では僕の経験不足でぶざまな思いをした。だから早めの競馬を心がけた」(岩田)。ヴィータローザで挑んだ一戦。イングランディーレの大逃げの前に何もできず、12着に敗れて悔いを残した。菊花賞では思い切り良く動こうと決め、見事にデルタブルースのステイヤーとしての資質を引き出した。

 のちに日本競馬をけん引していく存在となる角居勝彦師(引退)も、これがG1初制覇となった。「うれしいというよりもびっくり。ゴール前では本当に自分の馬なのかと思ったほど」と喜びを吐露した。

 だが、岩田の積極的な競馬を後押ししたのも角居師だった。「3000メートルは絶対に持つ。スタミナを信じて、4コーナー先頭くらいの気持ちで乗ってくれ」。この助言に岩田は大きくうなずいた。騎手と調教師の策が合致しての快勝だった。

 その後、岩田は中央へと移籍し、12年ディープブリランテでダービーを制覇。角居師は07年、牝馬ウオッカでダービーを勝つなど、日本競馬に革命を起こし、定年を前に勇退した。日本競馬において重要な役割を果たした2人が初めて大舞台で輝いたのが、この菊花賞だった。

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