【菊花賞】エキサイトバイオ“自然体の秋” 今野師は距離延長歓迎「中距離よりいいかも」

2025年10月22日 05:30

エキサイトバイオで菊花賞に挑む今野師(撮影・中辻 颯太)

 水曜企画「G1追Q探Q!」は担当記者が出走馬の陣営に聞きたかった質問をぶつけて本音に迫る。牡馬クラシック3冠最終戦「第86回菊花賞」は大阪本社の坂田高浩(40)が担当。ラジオNIKKEI賞の覇者エキサイトバイオを送り出す今野貞一師(48)を徹底取材した。「待望の初タイトル」「思い出の管理馬」「長距離適性」の3テーマを問う。

 【待望の初タイトル】開業14年目のうれしい初タイトルだった。今野師はエキサイトバイオのラジオNIKKEI賞でJRA重賞初制覇。指揮官は「いつもは見ていても気持ちが高ぶるところがありますが、(1番で)枠も向いたし何となくうまくいくだろうなと。リラックスして見られました」と照れ笑い。22年エーデルワイス賞(マルカラピッド)で交流重賞を勝っていたが、JRA重賞は勝つまでに2着8回。なかなか勝てない状況でも「常に結果を受け止めて考えていかなきゃいけないですから」と冷静だった。いい流れに乗り、約1カ月半後にドンインザムードを起用したレパードSで2勝目。立て続けの勝利にも浮かれることなく足元を見据える。「試行錯誤をする中で、作業面はいつも少しずつ変えています。それを変わりなくやっている感じ。何かをガラッと変えたわけじゃないんですよ」と分析。菊花賞に向けても、やるべきことをやるだけ。自然体で決戦に備えている。

 【思い出の管理馬】管理馬のG1初出走は14年阪神JFのロカだった。デビュー戦は中団から突き抜けて3馬身差V。その勝ちっぷりが評価され、1番人気に支持された。ただ、G1の雰囲気が影響したのか、まさかの大出遅れ。大外を回して追い上げるも8着だった。「ゲートは予想していませんでした。2走目で分からないところもあったとはいえ、まだまだ未熟でした」と振り返る。キャリア6走で引退したものの、繁殖入りして産んだ子が活躍。レガレイラ、ドゥラドーレスのきょうだいが先日21日のオールカマーでワンツーを決めた。「うれしいですよ。あの母系のラインで他の子も走っていますしね。財産になっています」と頬を緩ませる。「(管理馬は)どの馬も思い出深いです」として、一頭一頭と向き合ってきた経験が調教師としての引き出しを増やした。「もう少し、うまくできていれば」と日々、最善を追求しながら仕上げを施している。

 【長距離適性】エキサイトバイオは初勝利までに5戦を要したものの、そこからあずさ賞2着→ラジオNIKKEI賞1着で軌道に乗った。師は「コントロールに難しいところがあり、上手に走れませんでした」とデビュー当初を振り返った上で「元々、体力がありました。メンタルが幼くて、追い込み過ぎないようにする中でも走ってくれるので」と素質を評価。経験を積むごとに操縦性が増し、頭角を現した。前走後は疲れを考慮し、じっくり休養させるために菊花賞直行を選択。「休ませて良かったです。無理に(前哨戦を)挟むメリットもないので。見た目にボリューム感が出て、普段の動きも力強くなりました」と成長を感じている。「折り合いはつくし、3000メートルもこなせる気がします。中距離よりも、むしろいいかもしれません」と距離延長にも不安はない。18年は7番人気フィエールマンがラジオNIKKEI賞(2着)から直行ローテで戴冠を果たした。ダークホースになる可能性は十分だ。

 ◇今野 貞一(こんの・ていいち)1977年(昭52)4月24日生まれ、大阪府出身の48歳。04年3月にJRA競馬学校厩務員課程入学。05年1月から栗東・大久保龍志厩舎で厩務員、調教助手、06年4月に宮本博厩舎に移り、11年に調教師免許を取得。12年3月に厩舎を開業した。座右の銘は「見ている人は見ている」。JRA通算3145戦249勝、うち重賞は今年のラジオNIKKEI賞(エキサイトバイオ)とレパードS(ドンインザムード)の2勝。

 【取材後記】今野師が競馬の世界を志したのは大学在学中。20歳を過ぎてからバイト仲間と競馬場に行ったことがきっかけだった。「それまで特にやりたいことがなく、将来どうしようかなと思っていたんです。競馬に救われました」。そこからの決意は固く、卒業後に牧場勤務と競馬学校を経てトレセンへ。「初めは調教師になろうと思わなかったけど自分でやれる気がして」と振り返り、難関とされるJRA調教師試験をわずか2度の受験でスピード合格した。「集中すればできました」と笑みを浮かべる。

 受験すると決めてから合格まで昼食にカレーを食べ続けた。「当時、イチロー選手が食べ続けていたのをまねしました。同じことを毎日繰り返して準備することを見習おうと。あまり飽きないんです」という。準備を怠らない信念は今も変わらない。「目立たなくても分かる人は分かってくれるので」。丁寧に仕事を積み重ね、管理馬を勝利に導く。(坂田 高浩)

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