【ラジオNIKKEI賞】夏競馬でも注目 ロブチェン2冠に導いた松山と杉山晴師の信頼関係
2026年6月26日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】今村聖奈騎手のオークス優勝、武豊騎手の2週連続G1制覇など、春のG1シーズンはさまざまな話題で盛り上がった。中でも大きなトピックの一つが、ロブチェンの2冠制覇だ。
皐月賞(G1)、日本ダービー(G1)を連勝し、3冠に王手をかけたロブチェン。その手綱を取ったのは松山弘平騎手である。ダービーのパドックで、松山騎手は管理する杉山晴紀調教師にこう声をかけたという。
「どう乗ったらいいですか?」
一見すると当たり前の問いかけにも、あるいは直前過ぎる確認にも聞こえるこの一言。だが、そこには実は別の意味が込められていた。
デビュー以来、松山騎手とコンビを組み続けてきたロブチェンは、ホープフルS(G1)を含む2戦2勝で2歳シーズンを終えた。3歳初戦に選んだ共同通信杯(G3)では3着に敗戦。松山騎手は当時の敗因をこう振り返る。
「抜群のスタートを切った後、力んでしまい、折り合いを欠いてしまいました」
この敗戦を受け、松山騎手と杉山晴調教師は徹底的に話し合ったという。
「『どうすればもっとリラックスして走れるか』『そもそも、なぜ力んでしまったのか』など、とことん話し合いながら、調教で改善に努めました」
その末に迎えた皐月賞だから、松山騎手は「前で競馬をしても大丈夫」という自信を持って臨めた。すると、レース前、杉山晴調教師からたった一言、こう声をかけられた。
「任せます」
その言葉を聞き、松山騎手はこう感じ、決断したという。
「考えは一致している。だから、前で競馬をしよう」
そこに至るまで、2人は何度も議論を重ね、調教に取り組んできた。だからこそ、言葉を交わさずとも通じ合えるものがあった。その信頼が結実したのが、皐月賞での逃げ切り勝ちだったのだ。
そして迎えた日本ダービー。もちろん、ここでも松山騎手は「互いの考えは分かっている」と感じていた。だからこそ、あえて「どう乗ったらいいですか?」と口にしたのである。つまり、この質問は2人の信頼関係があってこその、いわばジョークだったのだ。
結果、皐月賞とは一転、今度は差す競馬でダービーも制し、ロブチェンは2冠制覇を達成した。
そもそも、杉山晴調教師と松山騎手の関係は、昨日今日に始まったものではない。20年に牝馬3冠を成し遂げたデアリングタクトも、このコンビで栄冠をつかんだ馬だった。長年にわたって積み重ねてきた信頼と絆が、2人の間には確かにあったのだ。
「それでもダービーのゴールの瞬間は僅差(頭差)で、正直、勝ったか負けたか分かりませんでした」
松山騎手はそう振り返る。だが、もし2人の間にこれだけの歴史と信頼がなければ、この頭差は生まれず、ロブチェンがダービー馬になっていなかった可能性もあったかもしれない。
秋には、牝馬3冠に続いて牡馬クラシック戦線での3冠ジョッキーを目指すことになる松山騎手。今週末のラジオNIKKEI賞(G3)では、ローベルクランツの手綱を取る。秋へ向けて弾みをつける意味でも、夏競馬で好スタートを切れるか注目したい。(フリーライター)
