「ウマ娘」新キャラ、愛される種牡馬タイトルホルダー “2つの強心臓”受け継ぐ2世は来年デビュー
2026年8月26日 05:20 日々トレセンや競馬場で取材を続ける記者がテーマを考え、自由に書く東西リレーコラム「書く書くしかじか」。今週は大阪本社の田井秀一(33)が担当。来年産駒がデビュー予定のタイトルホルダー(牡8)を訪ねて、北海道新ひだか町のレックススタッドへ向かった。
タイトルホルダーがレックススタッドにやってきたのは24年1月。種牡馬として3季目を終えた。早世したドゥラメンテの後継。馬産地の期待は大きく、先月のセレクトセールでは初年度産駒の1歳世代「フロアクラフトの2025」(牡)に1億4000万円の値が付いた。担当の岡崎大輝さんは「産駒は“馬がいい”と評判です。王道で活躍した父のように、クラシックに出走してくれれば理想ですね」と夢を膨らませる。
大器は晩成す。スタッドイン直後は種付けに苦労するシーンがあったという。「牝馬の隣に行っても、顔を横に並べても、馬っ気があまりにもなくて。背中にあごを乗せて、お友達みたいな感じで(笑い)。凄くおとなしかった」と振り返る。スイッチが入ったのは1~3週間の“練習”を経てから。「1年目を無事に終えてから、どんどん我が出てきてやんちゃになってきました。種牡馬になって変わる馬は多いですが、それが特に顕著」。今では噛(か)みついたり、放牧地に迎えに行っても馬房に帰るのを拒んで立ち上がったりするそう。
体高がないため、馬格のある牝馬が相手だとフラつくこともあったが、それも問題なくこなせるようになった。470キロ台だった現役時代のマラソンランナー体形からマッチョに変身。「最初は細くて華奢(きゃしゃ)でしたが、1年目の途中ぐらいからトモがムキムキになって凄い体に。種付けが忙しくなってもカイバ食いが悪くなりませんし、体調も崩さず、大きなアクシデントなく過ごせています」。種付け数は159→151→138と推移。需要が落ち込みやすい3季目も人気堅調だった。
レックススタッドは一般見学が可能(要受け付け)。G1・3勝のスターホースをひと目見ようと訪れるファンも多い。場長の鮫川純一さんは「一日に百何十人来た日もありました。マカヒキやジャックドールもそうですけど、人気は凄いです」と目を細める。今年6月には「ウマ娘」の新キャラクターとして発表されたばかり。今月22日には同期のエフフォーリアも登場。こちらは一足早く今年デビューを迎えた産駒が旋風を巻き起こしている。ライバルだった両馬はこれからもターフの内外から競馬を盛り上げてくれるだろう。
最後に魅力を問うと「タイトルホルダーは一番、人間味があるというか。他の馬を世話しているとちょっかいをかけてきますし、反抗も一番されるような気がします。かわいげがあります」と岡崎さん。ちなみに、育成期を熊や鹿が出没する岡田スタッドえりも分場で過ごした逸話から、「ウマ娘」では「鍛錬のため極限の自然環境に身を置きたがりがち」とキャラクター付けがなされているが、実馬は果たして――。「中より外が好きですね。ここには熊は出てきませんけど、夏はアブが凄くて、他の馬は刺されると走り回ったりします。でも、あの馬は全く気にしない。えりもで鍛えられたからかもしれません(笑い)」。スタミナと度胸。2つの意味での強心臓が受け継がれているであろう2世のデビューは来年に迫っている。
◇田井 秀一(たい・しゅういち)1993年(平5)1月2日生まれ、大阪府出身の33歳。阪大法学部卒。高校卒業後に道営競馬で調教厩務員を務めた経験がある。19年から中央競馬担当。
