鈴木記者 CPU抽選では“ドラマ”ない

2008年12月17日 06:47

 【走論書く論=鈴木正】14日に行われた阪神ジュベナイルフィリーズはブエナビスタが優勝した。2戦1勝のキャリアで出馬登録を行い、17分の6という厳しい抽選を突破してゲートイン。その幸運をVにつなげた。この抽選は11日午後に行われたのだが、関東馬4頭がすべて落選。一方、有力視されたブエナビスタ、ミクロコスモスが当選したことで一部関係者からは「本当に抽選しているのか?」との声も聞かれた。結果は前出2頭が1、3着。自分はJRAの公正さを信頼しているが、少々複雑な心境になった。
 それもこれもコンピューター(CPU)で抽選するから妙な疑念がわくのだ。いっそG1に関しては抽選すべてを関係者立ち会いのもと、福引で使う回転式抽選器で行うべきだ。JRAによれば、出走馬抽選や枠順決定にCPUが導入されたのは81年。CPUが乱数を発生させて瞬時に当選馬や、枠順を決めるという。現在、木曜に枠が決まるG1はすべてCPUによる枠順決定。2歳G1の出走馬抽選、枠順もCPUが決める。昔ながらの抽選器による枠順決定はスプリンターズSなど年間わずか9レースとなってしまった。
 抽選器を使った枠順抽選をめぐるドラマはこれまでいくつもあった。間近で見て印象深かったのは05年秋華賞。ラインクラフトでG13勝目を目指す福永が会場に顔を出し「妙にプレッシャーをかけられるから(武)豊さん(エアメサイア騎乗)の隣だけは嫌だなあ」と苦笑しながら抽選器を自ら回した。エアメサイアの伊藤雄師(当時)も姿を見せ「ならば祐一を見ながらレースを進めよう」と応酬。報道陣からも笑いが起き、宿敵といえどなごやかという独特のムードに包まれた。
 07年ヴィクトリアマイルの枠順抽選では奥平師が自らコイウタの枠を引き、そして優勝。その後、同馬がスプリンターズSに出走した際も奥平師が自ら抽選器を回した。この験担ぎはもうやめられないだろう。
 そう、抽選には人間くさいドラマがあるのだ。CPUでの決定はほんの瞬時で、人間による入力作業もないからミスが激減する。発表も早い。だがファンに競馬という興行を楽しんでもらうという観点からいえば物足りない。“舞台裏のドラマ”を見せることは競馬、ホースマンの魅力をアピールする有効な手段ではないか。昔ながらの“ガラガラ抽選”の機会をもっと増やせないものか。

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2008年12月17日のニュース