【スプリングS】“関東の風”アリゼオ劇的逃走劇
2010年3月22日 06:00 皐月賞トライアル「第59回スプリングS」が21日、中山競馬場で行われた。2番人気アリゼオが横山典弘騎手(42)を背に、意表を突く逃走劇で重賞初制覇。皐月賞(4月18日、中山)への有力候補へと名乗りを上げた。2着ゲシュタルト、3着ローズキングダムまでに優先出走権が与えられた。
意表を突く逃げで無敗の2歳王者に土をつけた。横山典と初コンビを組んだアリゼオが1コーナーで先頭に立つと、道中は1F12秒前後の同じようなラップを刻んで行った。淡々とした逃げ、勝負どころの3コーナーでも仕掛けて来るものはいない。直線を向いたところで後続を一瞬で引き離すと、内ラチ沿いの最短コースに進路を取って追いまくった。ゲシュタルト、そして断然人気ローズキングダムが迫ってきたがゴールまで脚色は衰えず、きっちり1馬身差をつけて重賞初Vを飾った。
今年早くも重賞6勝目を挙げた横山典が笑顔で振り返った。「スタートに気をつけていたが、少し出負けしてしまった。だが、二の脚が早くてすぐ前に行けたのが勝因だね。ローズが後ろに来てると思っていたので、最後まで必死で追ったよ」。
続けて名手は“逃げの戦法”について解説した。「前回騎乗したルメールから馬を気にするところがあると聞いていたので、(馬の)横に並ばないようにして、前に集中させるように気をつけたんだ。レース前から逃げてもいいと思っていたよ」。調教で手綱を取っている橋本助手は「(逃げは)びっくりしましたね。でも、自分のリズムで行けたのがよかったと思う。(5F通過60秒2)絶妙のペースだった。さすがだね」と鞍上の好プレーを称賛した。
前走の共同通信杯で気性面の課題を見せた。パドックで入れ込み、返し馬では他馬に突かれて気難しさを出した。その結果、直線伸びきれずに3着に敗れた。それを踏まえて陣営が施した対策は強めの調教を課すこと。これによってガス抜きをして、馬をリラックスさせた。
レース当日も陣営の工夫が見られた。ゲート裏までメンコを装着。パドックは2人で手綱を引き、返し馬では先出しを行った。さらに馬場に入場すると横山典はスタンド側に向かって歩かせた。外ラチ沿いを呼吸を合わせるようにゆっくりと歩き、返し馬へ。気負うところなく人馬の息がピッタリ合ったことが勝利へとつながった。
さあ次は、皐月賞(4月18日、中山)。橋本助手は「距離が伸びて折り合いに不安が出てくると思う。ジョッキーからまた課題が出されると思うので、気性面が成長するようにまた対策していきたい」とさらなる進化を目指す。イタリア語で「貿易風」と名付けられた馬の“関東からの風”の勢いはさらに増していきそうだ。(寺下 厚司)
☆アリゼオ 父シンボリクリスエス 母スクエアアウェイ(母の父フジキセキ)牡3歳 美浦・堀宣行厩舎所属 馬主・社台レースホース 生産者・北海道白老町社台コーポレーション白老ファーム 戦績4戦3勝 総獲得賞金8840万9000円。