【梅ちゃん先生 特別編】17日中京11R ワセダ狙い

2021年1月17日 08:00

 今日1月17日の曇天を「貫一曇り」という。尾崎紅葉の名作「金色夜叉」で主人公の間貫一が富豪へ嫁ぐ許嫁のお宮に復しゅうを誓ったのがこの日。「いいか、宮さん。1月の17日だ。来年の今月今夜のこの月を僕の涙で必ず曇らせてみせる」。熱海海岸での有名な別れのせりふである。

 「熱海か?中京7Rにアタミが登場するぜ」。平井の酒場「ゆがふ」で与太話をしていると、常連・金城が競馬新聞の出走表を指さした。近走は集中力を欠いて不振続きだが、荻野琢への乗り替わりが刺激になれば…。時計の掛かるダートなら巻き返せるか。
 熱海以上に注目したいのが早稲田。中京11R・日経新春杯のワセダインブルーだ。明治30年から35年まで新聞連載された「金色夜叉」の直筆原稿はほとんど見つかっていないが、その第5編にあたる「続々金色夜叉」の直筆原稿の断片が尾崎紅葉の書簡と共に早稲田大学図書館に所蔵されている。尾崎の旧宅は早大に近い新宿区横寺町にあった。

 そんな歴史など知るすべもないワセダインブルー。不思議と1月17日に合わせるように体調を上げてきた。「転厩2戦目で落ち着きも増しています。距離延長も歓迎です」と池上師は言う。昇級戦となった福島記念は出遅れながら6着まで追い込んできた。ハンデは再び軽量54キロ。体調の上積みが加われば…。

 「いいか、梅さん。1月の17日だ。もし馬券が外れたら、来年の今月今夜のこの月を僕の涙で必ず曇らせてみせるからな」。常連・金城の捨てぜりふを背に店を出た。

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