【香港QE2世C】ゴネるアルアイン、陣営の機転で逆走調整
2018年4月27日 05:30 国際派トレーナーの経験が窮地を救った。芝コースで最終追いを予定していたアルアインは、馬場入り後からゴネるしぐさ。「今朝は角馬場からイレ込んでいた」と池江師。ダクからキャンターに下ろす際も馬が激しく尻っ跳ね。ついには鞍上を振り落としてしまう事態に。幸い放馬することなく事なきを得たが、その後も前に進まず調教を拒み続ける。見かねたトレーナーは芝からオールウエザーにコースを変更。乗り手も攻め専(調教専門)助手から乗り慣れた担当助手に急きょスイッチ。まずは馬を落ち着かせることに専念した。
「環境が違うし普段とは違う乗り手。馬がきつい調教をされると分かってしまった。目つきや、雰囲気から馬が厩舎に帰りたがっていると感じた」
緊急事態にも池江師は極めて冷静沈着だった。右回りのシャティン競馬場で4コーナー奥にある検疫厩舎に戻ろうとする感情を逆手に取り、左回りでの調教を選択。AWコースで平常心を取り戻した姿を確認すると再び芝コースへ。スタンド前をダクで流し、馬房がある厩舎に向かって直線を“逆走”。これで走る気持ちを取り戻したアルアインは、1本目・速めキャンター→2本目・ギャロップと直線だけで強い負荷。馬場入りから40分の合わせ技で、最終調整をクリアした。
「香港ジョッキークラブが柔軟に対応してくださった。想定外のことだが肉体的な負荷はかけられた。あとは当日までのメンタル面がどうかですね」
池江厩舎は普段のフラットワークから集団調教で、追い切りも併せ馬が基本。これまで経験したことのないアクシデントにトレーナーは「メリットもあればデメリットもある。今後のいい勉強になった」と反省を忘れなかった。
この一件で地元の評価は“急降下”。大勢の海外メディアが池江師を取り囲み「精神面はどうか?」「レースは止まらないか?」と不安をあおってきた。本番でライバル勢のマークが手薄になれば幸い。逆境をはねのけ、世界を震かんさせる。
◆クイーンエリザベス2世C 香港競馬の下半期における中距離王者決定戦(香港では夏の暑さを避けるため、8月の競馬開催はなし。シーズンは9月上旬に始まり、翌年7月中旬までが一区切り)。12月に行われる香港カップ(G1、芝2000メートル)と4月に行われるこのレースが香港中距離路線の2本柱となっている。