クリスチャン、一流になれたのはスパルタ兄のおかげ!?

2018年4月27日 05:30

昨年の凱旋門賞でブラムトに跨るクリスチャン

【競馬人生劇場・平松さとし】2003年のことだ。その少年は検量室でムチをビュンビュンと器用に振っていた。場所はイタリア。ミラノにある競馬場にミルコ・デムーロ騎手を訪ねた時の話である。

 ムチを振っていたのは当時まだ11歳だったクリスチャン・デムーロ。ミルコの弟だ。

 「ミルコみたいな一流のジョッキーになるんだ!!」

 クリスチャン少年は目を輝かせてそう語っていた。

 それからちょうど10年後。場所を日本の阪神競馬場に替え、兄弟は桜の覇を競っていた。結果、ミルコの乗るレッドオーヴァルを2着に下して桜花賞を制したのはクリスチャン騎乗のアユサンだった。

 09年にはミラノ大賞典(G1)を勝利したクリスチャンだが、欧州でも誰もが知る存在となったのは、ベースをフランスに移してから。16年にはラクレソニエールでフランス版の桜花賞、オークスを連勝すると、翌17年にはブラムトで同皐月賞、ダービーを制覇してみせた。

 目標としていた一流騎手になった感のあるクリスチャンに、当時、話を聞くと幼少時ポニーに乗っていた時のエピソードを教えてくれた。

 「またがった途端にミルコがポニーのお尻をバンバン叩くから僕は疾走するポニーから落とされないようにするだけで必死だったんだ」

 ここでひと呼吸置くと、笑みを見せて次のように続けた。

 「怖かったけど、そんなミルコのスパルタ教育のおかげでバランス感覚が養えたのかもしれない」

 そんなクリスチャンは今週末、香港で行われるクイーンエリザベス2世Cで日本馬アルアインの手綱を取る。このレースで人気の一角となりそうな地元のタイムワープには、実は同馬が欧州在籍時に2度乗って2度とも勝っている。敵を知るクリスチャンの手綱さばきに期待したい。(文中敬称略)

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