モレイラが壁に挑む JRA騎手免許10・2第1次試験

2018年9月4日 05:30

ジョアン・モレイラ

 中央競馬所属の騎手になるには必ずJRAの騎手免許試験を受けなければならない。どんなに世界的名手でも例外はない。通年免許の試験は、

 (1)「競馬学校騎手課程生徒(卒業見込みの者)」

 (2)「地方競馬全国協会の騎手免許を受けている者」

 (3)「(1)および(2)以外の者」

の区分ごとに行われる。

 養成機関である競馬学校では留年も珍しくなく、卒業見込みの“お墨付き”をもらえれば騎手となるのに十分なレベルに達した証となる。実際、近10年では受験者全員が合格している。

 一方、(2)と(3)は近10年で5人しか合格していない狭き門。この間、騎手復帰の柴田未崎以外で一発合格を果たしたのはルメールだけだ。モレイラは(3)での受験。(3)には外国人のほか藤井勘一郎ら海外で騎乗する日本人も含まれる。

 まずは1次試験(10月2日)。最大の難関は筆記試験だ。基本的には「競馬関係法規」と「馬学、衛生学、基本馬術、その他競馬に関する知識および一般常識」が各100点満点だが、「実績が優秀であると認めた外国の騎手」に対しては「競馬関係法規および中央競馬の騎手として必要な競馬に関する知識」(100点満点)に軽減される。英語での受験も可能で、おおむね60点が合格ライン。日本語を求められる2次試験に比べれば難易度は低く思えるかもしれないが、実はこちらの壁も高い。JRA審判部免許課の相馬慎吾課長補佐は「既に騎手免許を取得している人に改めて知識を問う筆記試験を課すのは、他国では見られない厳しい試験だと思います」と説明する。

 14年に合格した戸崎は前年は1次試験で不合格。「記述式の問題でうまく説明しきれなかった。しっかり理解していないと駄目。落ちたその日から、競馬に行く時も常に教科書を持参して1日2〜3時間は勉強した」と振り返る。M・デムーロも1回目の挑戦(13年)は1次試験(英語で受験)で不合格となっている。母国ブラジルでデビューしてシンガポール、香港で騎手免許を取得してきたモレイラにとっても「過去最難関」となるかもしれない。

 これを突破すれば2次試験(来年1月30日)。日本語による口頭試験が待っている。相馬氏は「競馬に関して日本語で基本的なコミュニケーションを取れるレベルは必要です」と話す。もちろんモレイラは既に勉強に取り組んでいるが、札幌での取材対応は全て通訳を介していた。日本語では「こんにちは」などのあいさつや「私はモレイラです」「よろしくお願いします」程度しか披露していない。年明けまでまだ時間はあるとはいえ、かなりの“末脚”を求められそうだ。

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