【大井・東京盃】菜七子、涙の重賞初V!24度目で決めた

2019年10月3日 05:30

東京盃を制し、笑顔の藤田菜七子(撮影・島崎忠彦)

 菜七子が泣いた――。藤田菜七子(22)が2日、交流G2「第53回東京盃」(大井)で1番人気(単勝150円)のコパノキッキング(セン4=村山)に騎乗し、2着に4馬身差をつける“圧逃劇”で優勝。自身24度目の挑戦で、JRA女性騎手として史上初の交流重賞制覇を果たした。菜七子が日本競馬界にまた新たな歴史を切り開き、キッキングとともに次走「JBCスプリント」(11月4日、浦和)で“G1ジョッキー”を目指す。

 ゴールまであと少し、もう少し。菜七子が必死にキッキングを追う。大井1200メートルコースの直線距離は約386メートル。それは果てしない道にも思えた。

 「大井の直線がこんなに長く感じたのは初めてでした。凄くうれしいけど、今はホッとした気持ちの方が大きい」

 大きく安どの息を吐き出すと、目を潤ませた。菜七子がこれまで泣いたのは初勝利(16年4月10日)のウイナーズサークルで流したうれし涙のたった一度だけ。その後はどんなつらいこと、悔しいことがあってもこらえてきたが、「ファンの方々から本当にたくさんの“おめでとう”をかけてもらって。それが凄くうれしくて…」と3年ぶりの涙だった。

 終わってみれば、2着に4馬身差の完勝。4戦連続のコンビ。今回初めて作戦を一任された。「どう乗ろうか、最後まで本当に悩んだ」。追い込み脚質への転換に成功していたキッキングだったが、前走・クラスターCでは7戦ぶりに先行策を取って3着に敗退。疑問視する声もあった中、返し馬でイレ込みが少ないことを確認すると、好発を決めれば再び逃げると腹をくくった。

 その前走後。馬主のDr.コパ氏、村山調教師らと盛岡市内の焼き肉店で反省会。席上、コパ氏に説かれたのは、JRA唯一の女性騎手としての姿勢。女性であるがゆえに本意ではない注目の浴び方をすることもあり、言葉数が減った時期もあった。「取材は大変かもしれないけど、ファンはマスコミの向こう側にいる。(武)豊さんが常に発信してきたから今のJRAがある。その辺もしっかりしていこう」――。神妙に聞き入る菜七子の姿がそこにはあった。

 「これに満足せず次も勝ちたい」。口取り式では人さし指を1本だけ掲げるポーズ。次走は交流G1「JBCスプリント」が濃厚。次は笑顔の“ピースサイン”が待っている。

 ◆藤田 菜七子(ふじた・ななこ)1997年(平9)8月9日生まれ、茨城県守谷市出身の22歳。16年3月5日、根本康広厩舎(美浦)からJRAで16年ぶり、史上7人目の女性騎手としてデビュー。同年4月10日の福島9Rサニーデイズで初勝利。JRA通算1799戦77勝(2日現在)。1メートル57、46キロ。血液型A。空手初段、剣道2段。趣味は読書と音楽鑑賞。18年に「第3回黒髪美人大賞」受賞。

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