【中山記念】横山典キングリー G1馬5頭斬りV!観客いなくても“千両役者”魅せた

2020年3月2日 05:30

中山記念を制した横山典弘騎乗のダノンキングリー(左手前)(撮影・西川祐介)

 歓声のないVゴールの先にビッグタイトルが見えた。「第94回中山記念」が1日、新型コロナウイルス感染防止のため無観客となった中山競馬場で行われ、横山典弘(52)騎乗の1番人気ダノンキングリーが直線抜け出して快勝。G1ホース5頭を完封して3度目の重賞制覇を飾った。

 春を待ちわびるメジロの地鳴きだけが反響する無観客の表彰式。「ノリさん、お願い」。ウイナーズサークルでフェンスの向こうからサイン色紙を差し出す女性ファンの姿はない。「ノリ、ノリ!!」。外ラチにしがみつきながら丸めた競馬新聞を振り回す中年親父もいない。「勝ったうれしさに変わりはないけど、お客さんがいないのは寂しいね。やっぱりファンあっての競馬だから」。JRA重賞26年連続勝利で通算175勝目、中山記念では単独最多の5勝目を挙げた横山典も寂しげに笑った。

 観客がいなくても千両役者ぶりは変わらない。先行するマルターズアポジー、ソウルスターリングの離れた3番手でぴたりと折り合う横山典ダノンキングリー。直線半ば、後続勢の脚色を見極めた上で先頭に立った。誰もいない客席に心地良い蹄音が響く。差を詰めるラッキーライラック(2着)以下G1ホース5頭を封じての完勝ゴール。「2頭が前に行ったからあの位置へ。考えていた通りのレースになったし、直線の手応えも良かった。抜け出して1頭になったらフラフラしたけど、このあたりに今後の伸びしろがある」

 デビュー以来手綱を取ってきた戸崎が昨年11月4日のJBCレディスクラシックで落馬し、右肘骨折で休養。急きょ横山典に乗り替わった昨年のマイルCSは5着に敗れたが、2度目の騎乗で最高の結果を出した。「G1を勝っていない馬だけど、勝つ力は十分に持っている。このまま順調に行ってほしいし、期待は大きい」と続けた。

 今春のG1獲りへ前進する始動戦V。送り出した萩原師も手応えを膨らませる。「(休み明けで)100点満点とはいかないが、上々の競馬でした。今後は様子を見て大阪杯(4月5日、阪神)に行こうと思っています」。皐月賞(3着)、ダービー(2着)、マイルCSに続く4度目のG1挑戦を表明した。

 「新型コロナウイルスの感染が終息して、また大勢のお客さんの前で大きいところを勝ちたい」と締めくくる横山典。その頭上から春を待ちわびるメジロの地鳴きが再び聞こえてきた。

 ◆ダノンキングリー 父ディープインパクト 母マイグッドネス(母の父ストームキャット)牡4歳 美浦・萩原厩舎所属 馬主・ダノックス 生産者・北海道浦河町の三嶋牧場 戦績8戦5勝 総獲得賞金3億2044万2000円。

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