【高松宮記念】松若スーパーフレア 人馬初G1V!1位入線ガウディー降着で繰り上がり歓喜

2020年3月30日 05:30

クリノガウディー(左)の進路妨害による降着で、繰り上がり1着となり高松宮記念を制したモズスーパーフレア(手前)(撮影・後藤 大輝)

 想像もつかない結末が待っていた。春のG1開幕を告げる電撃の桶狭間決戦「第50回高松宮記念」が29日、JRA史上初となる無観客競馬で行われた。15番人気クリノガウディーが1位入線を果たしたが、最後の直線で内側に斜行し、モズスーパーフレア、ダイアトニックの走行を妨害したとして4着降着。2位入線の9番人気モズスーパーフレアが繰り上がっての初G1制覇となった。松若風馬(24)もデビュー7年目でG1初Vとなった。

 大観衆に包まれていたなら、どれほどのどよめきが起こっていただろう。全馬のゴールから17分後。着順掲示板はいったん数字が全て消え、真の勝者・モズスーパーフレアの初G1制覇を示す「16」の数字を1着欄にともした。

 松若は戸惑いを見せながらインタビュー台に上がった。「素直に喜べないですけど…」と前置き。そして「ゴールをした時には、負けたと思った。駄目だった…というのが率直な気持ち」と言葉をつないだ。

 それでも24歳、まだ表情に幼さを残す若武者の堂々たる騎乗は褒めていい。出脚を利かせ、ハナを切った。迷いはなかった。「スタートには気をつけようと思って、まずはそこをクリアできた。いいポジション取りができたし、いいペースで行けた。最後は無我夢中で追った」。残り100メートル。クリノガウディーの斜行でダイアトニックが内に動き、その影響を受けて後肢が内に流れた。それでも追い続けた。諦めなかったから驚きのどんでん返しを迎えることができた。

 師匠・音無師とガッチリ握手を交わす。「デビュー当初からお世話になっている。先生に恩を一つ返せたかな」。ようやく笑みが浮かんだ。師も「彼は努力家。こういう日が来るのを夢見てやってきたと思うし、うれしいです」と照れることなく語った。師弟の太い絆がはっきりと見えた。

 最高の晴れ舞台だがファンの姿はなし。口取りの写真撮影や表彰式も中止。若きヒーローは正直な思いを口にしつつ、前を向くことも忘れなかった。「ファンファーレが鳴った時は寂しかった。普段は手拍子が聞こえるのに、それがない。お客さまがいないって、こんなに寂しいのかと…。本当に大変な状況。だけど早く元通りになることを願っている。今度勝った時はお客さまの前でウイニングランがしたい」

 音無師は秋のプランに言及した。「中山は相性がいいのでスプリンターズS(10月4日)にはいきたい。その前にどうするかは、また考えていきたい」。昨年2着のリベンジは、そのまま春秋スプリント制圧につながる。次は観客のいる前でしっかりと胸を張る。

 ◆モズスーパーフレア 父スペイツタウン 母クリスティーズトレジャー(母の父ビロングトゥミー)牝5歳 栗東・音無厩舎所属 馬主・キャピタル・システム 生産者・米国アルファデルタステーブル 戦績20戦7勝 総獲得賞金3億2882万5000円。

 ◇松若 風馬(まつわか・ふうま)1995年(平7)9月4日生まれ、滋賀県出身の24歳。父・勝さんは10年ダービー馬エイシンフラッシュなどを担当した名装蹄師。競馬学校30期生で同期に石川裕紀人、小崎綾也など。14年3月、音無厩舎からデビュー。初年度に47勝を挙げ、新人賞受賞。15年小倉記念(アズマシャトル)で重賞初制覇。G1は15年宝塚記念(レッドデイヴィス)の初騎乗から20度目の挑戦で悲願の初勝利。1メートル51、45キロ。血液型B。

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