武豊「勇気与えたい」 緊急事態宣言でもJRA開催続行!新たに人馬移動制限設け無観客のまま
2020年4月9日 05:30 日本中央競馬会(JRA)は8日、今週末以降も無観客での競馬開催を続行すると発表した。政府による緊急事態宣言を受け、開催の可否を協議した結果、新たな人馬の移動制限を設けた上で開催可能と判断した。9日に枠順が確定する牝馬クラシック第1冠「第80回桜花賞」(12日、阪神)も予定通りに開催。有力馬レシステンシアに騎乗する競馬界のレジェンド・武豊(51)は改めて競馬開催続行についての決意を語った。
政府による緊急事態宣言で開催が危ぶまれた今週末以降の中央競馬だが、主催するJRAは新たな人馬の移動制限を設けた上で無観客での開催続行を決めた。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、JRAは2月29日から無観客で競馬を開催。戦後初の異常事態が続くが、その間、電話・インターネット投票に限定された馬券の売り上げは、前年比で約2割減に踏みとどまっている。
日本騎手クラブの会長を務める武豊は改めて語った。「大変な状況ですがテレビ、ラジオを通じて競馬を楽しんでください。全力で騎乗しますし少しでも楽しんでもらって勇気を与えられたら…」。感染拡大防止のため、取材対象者と代表質問者の1人ずつしか入室を許されない、異例の記者会見場。日本競馬界のレジェンドは重苦しい空気の中、ファンに語りかけた。そして「競馬の売得金(馬券の発売金額から競走除外による返還金を引いた額)の一部は国に納付している。こんな時こそ競馬の存在意義があると思う」。午後に大井競馬場で騎乗した後は「(開催続行を聞いて)身が引き締まる思い。競馬は国民の娯楽。社会に貢献したいし他のイベントが中止となる中、続行できる意味を受け止めたい」と話した。
中央競馬は馬券の売得金の一部を国庫納付金として納め、国の財政に貢献している。売得金の約10%が自動的に計上される第1国庫納付金と、JRAの利益から拠出される第2国庫納付金を合わせ、昨年(19年)は約3200億円を納付。活用名目に「社会福祉」も含まれる財源として、決して少ない額ではなく、その存在意義は小さくない。
外出自粛要請で庶民の生活が制限される状況で、数少ない「在宅での娯楽」を提供し続けてきた中央競馬。桜花賞に有力馬サンクテュエールを出走させる藤沢和雄調教師(68)は「外出もできず家に閉じこもっている人が、レースでストレスを解消してもらえればありがたい」と語る。日本全体に先の見えない沈滞ムードが漂う中、少しでも明るく、息抜きの場を提供できれば…。全てのホースマンが団結し、国難の中の「ささやかな楽しみ」となるべく、全力を注いでいく。
【JRA3つの新設ルール】
(1)騎手の移動制限 土曜日と日曜日で移動しての騎乗は認めない。ただし障害競走に騎乗する騎手は対象から除外。期間は18日~5月3日。期間中のG1(皐月賞、天皇賞・春)に騎乗する騎手は、前日も同じ競馬場での騎乗が必須に。
(2)競走馬の他ブロック競走への出走制限 美浦所属馬は阪神、京都、栗東所属馬は中山、東京への出走が不可。ただしG1や重賞など平地オープンと障害競走は対象から除外される。期間は18日~5月3日。期間中の第3場となる福島出走には制限は設けない。
(3)認定調整ルーム 騎手が騎乗前日の入室を義務づけられている各競馬場内、トレセンの通常の調整ルームに加え、新たにJRAが認定する場所(騎手の自宅、競馬場最寄りのホテル)を「認定調整ルーム」とし、騎乗当日に同所から競馬場への移動を認める。騎手の自己申告を受けてJRAが認定。感染リスク軽減、分散が目的で期間は10日~5月3日。
≪昨年3187億円超 売り上げ一部が国庫へ≫JRAが国に納める国庫納付金は2種類。まず売得金の10%が「第1国庫納付金」として計上される。これは100円の馬券のうち約75円が払戻金に充てられ、控除された約25円のうち10円が国庫納付金、残りがJRAの運営費となる仕組み。さらにJRAの事業運営の結果、各年度において利益が発生した場合、その半分が「第2国庫納付金」となる。昨年は「第1」が2881億7886万6170円、「第2」が305億7183万7819円の計3187億5070万3989円が納付金として国の一般財源に繰り入れられた。
≪大井も継続≫大井競馬(東京都品川区)を主催するTCK特別区競馬組合も8日、無観客での開催継続を決定した。大井競馬はJRAに先駆けて2月27日から無観客での開催を実施。JRAと同様に各地の場外発売所も休止した上で電話、インターネット投票限定での発売を続けている。開催継続の決定もJRAより早かった。同組合は「引き続き無観客競馬を開催することで、23特別区の財政貢献に努めてまいります」と表明。大井競馬は10日まで開催。次回開催は27日~5月2日の予定。