7年前のエイシンフラッシュから続く物語
2020年10月9日 05:30 【競馬人生劇場・平松さとし】今週末の日曜日、東京競馬場では毎日王冠(G2)、京都では京都大賞典(G2)が行われる。
いずれも天皇賞・秋(G1)につながる重要な一戦だが、7年前の2013年、毎日王冠を優勝したのがエイシンフラッシュだった。同馬は藤原英昭厩舎の管理馬。ダービーを制覇(10年)した際は内田博幸騎手、前年に天皇賞・秋を勝った時にはM・デムーロ騎手が手綱を取っていたが、この毎日王冠の鞍上は福永祐一騎手だった。
藤原英厩舎には調教師の実弟の藤原和男調教助手がいる。藤原助手は兄の厩舎に来る前、北橋修二厩舎の所属だった。すでに引退された北橋調教師は福永騎手の師匠。この師弟コンビが、エイシンプレストンを駆って香港のG1に5度挑戦。うち3勝したのは有名だが、藤原助手もこの5度の遠征全てに同行していたのだ。
そういえば一度はこんなことがあった。福永騎手を背にシャティン競馬場で追い切ろうとしたエイシンプレストンが、馬場入り後、走行を拒否。鞍上が押しても叩いても動かなくなったのだ。翌朝、藤原助手を乗せて改めて追い切ると、同馬はスムーズに敢行。若き日の福永騎手の苦い思い出だ。
しかし、彼が偉いのは変なプライドにこだわらないところ。後に藤原助手に馬術的な御し方を毎週、教わったのだ。こういった素直さが、彼をリーディングジョッキーへと昇華させたのだろう。
冒頭のエイシンフラッシュの話に戻ると、福永騎手は続く天皇賞・秋ではこの毎日王冠で2着に破ったジャスタウェイに乗って優勝。エイシンフラッシュ(3着)を負かしているのだ。これもまた一つの恩返しの形かもしれない。
さて、藤原英調教師と福永騎手、そして藤原助手のトリオは14年にはフィエロで香港マイル(6着)、15年にはステファノスで香港クイーンエリザベス2世C(2着)に挑戦するなど、物語はまだ続いている。そして、今週の京都大賞典にはパフォーマプロミスで挑む。新たなる章が幕を開けることを望みたい。(フリーライター)