“今度こそ”福永×矢作師の悲願

2020年10月23日 05:30

リアルスティールと福永祐一

 【競馬人生劇場・平松さとし】2016年3月27日。この日、中京競馬場で行われた高松宮記念(G1)をレコードで制したのはビッグアーサー。手綱を取ったのは福永祐一騎手だった。当時、レース後に祝福のメールを打つと「ありがとう」の言葉とともに少しモヤモヤが晴れたというような文面が返されてきた。

 G1を制したにもかかわらず、そう感じたのには理由があった。その出来事は前日の夜にあった。現地時間26日の土曜日、ドバイでドバイワールドCデーが開催。UAEダービーを武豊騎手騎乗のラニ(栗東・松永幹夫厩舎)が制するなど、日本馬が活躍を見せた。その中の一頭に栗東・矢作芳人厩舎のリアルスティールがいた。同馬はR・ムーア騎手を乗せドバイターフを優勝。伯楽をしてもなかなか打ち破ることのできなかった海の向こうのG1の壁を、ついに突破してみせた。

 これを複雑な心境で見たのが福永騎手だった。リアルスティールはそれまで日本国内で8戦2勝。日本ダービー(G1)の4着など、その8戦全てで手綱を取っていたのが彼だった。なかなか手の届かなかったG1を初騎乗のムーア騎手にあっさり勝たれた。少なからずプライドが傷ついたであろうことは、想像に難くない。

 さて、そんな福永騎手は今週末に行われる菊花賞(G1)でディープインパクト産駒のコントレイルに騎乗する。デビュー以来ここまで6戦して負け知らず。春には皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)を勝っており、父子2代での無敗の3冠制覇という偉業がかかる。福永騎手はこの馬の6戦中5戦で騎乗しているが、唯一乗れなかったレースで手綱を取ったのがムーア騎手。リアルスティールでドバイターフを勝ったあのムーア騎手だ。そう、コントレイルはリアルスティールと同じ矢作調教師の管理馬だから、このようなことが起きても不思議ではないのである。

 ちなみにリアルスティールは福永騎手が乗った菊花賞では2着に敗れている。矢作調教師と福永騎手は、さまざまな思いを持ってコントレイルの3冠制覇に臨むことだろう。応援したい。
 (フリーライター)

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