【菊花賞】コントレイル福永 最年長43歳で偉業3冠!父・洋一氏も勝った菊で「親孝行」

2020年10月26日 05:30

<菊花賞>コントレイルで勝利し三冠を指さす福永(撮影・奥 調)

 クラシック3冠最終戦「第81回菊花賞」が25日、京都競馬場で行われ、単勝110円の圧倒的1番人気に推されたコントレイル(牡=矢作)が首差でV。史上初、05年の父ディープインパクトに続く無敗の3冠に輝いた。牡馬3冠制覇は9年ぶり8頭目、無敗での達成は3頭目。福永祐一(43)は最年長43歳10カ月17日での3冠達成。過去3人(保田隆芳、岡部幸雄、武豊)しか記録していないクラシック通算10勝も達成した。

 最終章が最も難関だった。直線、アリストテレスがぴたりと並んでの叩き合い。福永は右ムチ2発で離しにかかった。抵抗するライバル。さらに右ムチを4発叩き込む。ようやく前に出た。首差。ついに無敗父子3冠。700人のファンに向けて左手で「3」の数字をつくった。

 「すっげー疲れた」。苦しみ抜いた。汗を拭い、最高の相棒をねぎらった。「最後まで抜かせなかったし改めて凄い馬だなと。死力を尽くして走ってくれた」。福永はクラシック10勝目。馬に感謝した。

 3000メートルは長く感じた。スタートを決めて7番手。絶妙なポジションに見えたが2着馬に、にらまれ続けた。「プレッシャーを掛けてきた。それでエキサイトした」。父ディープも菊では道中で興奮した。「我慢してくれ」。当時の武豊と同じ言葉を心の中でつぶやいた。

 直線、わずかに敗戦を覚悟した。「一瞬、まずいかなと思った。そこでお客さんの声援が飛び込んできた。凄く力になった。馬を信じ抜かなきゃいけないと思った」。無観客ならどうだったか。人馬とも強い気持ちを取り戻し、ライバルを振り切った。

 福永の父であり、天才騎手と呼ばれた洋一さんが初めてG1級レースを制したのも菊花賞。49年前、1971年、京都競馬場。洋一騎手のニホンピロムーテーは道中で先頭を強引に奪い、涼しい顔で押し切った。翌日、「スタンド騒然」「奇襲」の見出しが新聞に躍った。「自分はコントレイルほどできた息子ではない」と笑う。「ダービー同様、父がかなえられなかった夢を自分が代わりに果たすことで親孝行になるかなと思う」

 苦しみをバネにできる。だから福永は進化し続ける。「正直うまく乗れなかった。もっと技術を磨いていきたい。ここからが新たなスタート。日本一強いという称号を勝ち取るために一緒に頑張っていく」。デアリングタクトとの“同期無敗3冠対決”や、強豪古馬との激突へ。新たな戦いが始まる。

 コロナ禍で気持ちが沈む中、医療従事者を励ますべく飛んだのがブルーインパルス。青空に飛行機雲を描いた。コントレイル(飛行機雲)という馬名は運命的だ。逆境でも諦めるな。無敗の救世主が勇気をくれた。

 ◆福永 祐一(ふくなが・ゆういち)1976年(昭51)12月9日生まれ、滋賀県栗東市出身の43歳。父は福永洋一元騎手。和田竜二、柴田大知と同期、「花の12期生」として96年デビュー。JRA通算1万7950戦2368勝(G1・28勝)。海外でも05年アメリカンオークス(シーザリオ)などG1・5勝を挙げている。1メートル60、52キロ。血液型B。

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