【有馬記念】バビット担当の竹下厩務員 先輩の夢、ファンの夢…思い乗せ挑む初舞台

2020年12月25日 05:30

有馬記念に出走するバビットと竹下厩務員(撮影・亀井 直樹)

 キャリア30年超を誇る、バビット担当の竹下厩務員は初の有馬。「このステージに立てることが何よりうれしい」。担当馬の重賞初勝利も、ここ数年のこと。18年中山牝馬S。逃げのスタイルでファンに愛されたカワキタエンカだった。19年福島牝馬S9着後に心臓疾患を発症して現役引退。牧場に戻った後、同年暮れに持病が再発。ルーラーシップの子を受胎中だったが子を残すことなく急死した。

 「悲しかった。僕にとっては、あの中山牝馬SはG1よりも価値があった。浜田厩舎から出た初めての重賞勝ち馬。いろいろな思い出があったんだ」

 中山牝馬Sの前日。ある居酒屋で老夫婦と出会った。「たまたまカワキタエンカが好きな人だった。凄い確率だなって…」。熱く語り合った時間は、かけがえのないものとなった。翌日、6番人気ながら逃げ切った。その後も老夫婦との関係は続いた。「撮った写真を送ってくれて、いつも競馬場に来てくれた。今も付き合いがある。担当馬は全て応援してくれるよ」

 カワキタエンカからバトンを受けたバビットも逃げ馬なのは偶然か、それとも必然か。さあ、グランプリ。逃げ馬にとってベストの1番枠をゲット。追い風が吹き始めた。エンカの夢、老夫婦の夢…。いろいろな思いとともにバビットは大一番のラップを刻む。

 ◆竹下 一登(たけした・かずと)1962年(昭37)5月17日生まれ、鹿児島県出身の58歳。競馬学校卒業後、梅田康雄厩舎入り。解散に伴い、15年浜田厩舎へ。バビットはデビューから担当。趣味は旅行。

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