【セントポーリア賞】グレートマジシャン、陣営ビックリ初陣Vもう一丁 ルメール絶賛「凄く走る」

2021年1月26日 05:30

グレートマジシャン(撮影・西川祐介)

 注目の3歳馬をピックアップする新企画「Road to Classic」。第2回はクラシックの登竜門として知られるセントポーリア賞(31日、東京芝1800メートル)に出走予定のグレートマジシャン(牡=宮田、父ディープインパクト)。気性面を考慮して覆面を着用するが、レースでは魔法にかかったように伸びる。ドイツのG1血脈を引き継ぐディープインパクト産駒をクリストフ・ルメール(41)も絶賛する。

 名は体を表すという。魔術にかけられたような脚を使ったグレートマジシャンにルメールが驚きの声を上げた。昨年11月の新馬戦直後の脱鞍所前。「道中2度もかわされたのにファイトして伸びました。気性が幼いと聞いていましたが凄く走ります」。直線で抜け出すと、外から馬体を併せるレッドロワを頭差ねじ伏せた。3着以下には5馬身差。そのレースぶりには昨年開業した宮田師も驚きを隠せない。「まさか新馬勝ちするとは…。遅生まれだし奥手の血統。乗りだしたのも牧場(ノーザンファーム早来)で一番遅かったんです」

 独オークスなどドイツでG1・2勝を挙げた名牝ナイトマジックの子。ディープインパクトを父に持つフォイヤーヴェルク(7歳時の20年新潟ジャンプSで重賞初制覇)など5頭の全兄、全姉はいずれも遅咲きだ。しかも、3月に出産のピークを迎えるサラブレッド生産で5月の遅生まれ。気性が幼いせいで2歳時は牧場でも美浦トレセンに入厩してもソワソワして落ち着かない。ゲートの中でもおとなしく駐立できない。そのため覆面を着用してきた。

 だが、馬場に脚を踏み入れた途端、魔術にかかったように長い四肢を柔らかく弾ませる。「デビュー前からWコースで2勝クラスの古馬を併せ馬であおっていました。大きなフットワークには素質を感じます。中間は背中の芯が太くなって、さらにパワーアップ。2歳時には動けなかった坂路でもしっかり走れるようになった」と宮田師。20日の1週前追い切りでも坂路で馬なりのまま4F51秒8を出した。「幼さが残っているし、右前のソエ(若駒特有の管骨の痛み)も固まっていないので無理はさせられません。晩成血統にこの時期、100%を求めてはいけないと思っています」。国枝師の弟子にあたる新進トレーナーの見識である。

 モーツァルトの歌曲「魔術師」が完成したのは今から236年前、グレートマジシャンの誕生日にあたる5月7日だった。♪彼に初めて出会った時、今まで感じたこともない何かを感じた…彼はきっと魔術師…(歌詞抜粋)。母ナイトマジックの重厚な欧州血統にディープインパクトを掛け合わせたため、日本の軽い芝でもマジック(魔術)を使える。鍵盤のタッチが軽やかなモーツァルトのピアノソナタのようにターフを軽快に刻む覆面の魔術師。彼が感じさせるのはクラシック級の素質だ。

 ▽セントポーリア賞 90年以降、東京芝1800メートルか2000メートルで行われてきた3歳1勝クラスの特別戦。優勝馬にはのちの有名馬が多数。95年優勝のジェニュインはここから3連勝で皐月賞を制覇。15年ドゥラメンテは共同通信杯2着を挟み、皐月賞、ダービーの2冠制覇へと羽ばたいた。

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