【共同通信杯】キングストンボーイ、大人の脚さばき披露 古馬との3頭併せで馬なり堂々

2021年2月11日 05:30

3頭併せで追い切るキングストンボーイ(右端)

 競馬のレジェンドが託すラストクラシックの真打ちだ。「第55回共同通信杯」(14日、東京)の追い切りが10日に行われ、美浦ではキングストンボーイが成長力をアピールした。18年皐月賞馬エポカドーロの半弟で、送り出すのは来年2月で引退する藤沢和雄調教師(69)。名伯楽の仕上げで兄弟クラシック獲りへ名乗りを上げる構えだ。

 人は経験からしか学べないと言ったのは英国の名女優エマ・ワトソンだった。競走馬にとっては…。「どうだい?随分と大人っぽくなってきただろ?牡馬は経験によって成長するものだ」。藤沢和師が坂路に目を向けながら口火を切った。その頼もしげな視線の先には堂々とストライドを伸ばすキングストンボーイ。歴代2人目のJRA通算1500勝を師にもたらせたシークレットアイズ(5歳2勝クラス)、ヴァンランディ(5歳オープン)の後方から馬なりのまま併入した。

 来年2月で70歳定年を迎える同師にとって今春が最後のクラシック。「最後、最後って、そんなに俺をやめさせたいのか!」と笑うが、最後を託せるだけの素質を感じている。「早くから使えた健康な馬だし、素晴らしいフットワークをしている。上(皐月賞馬エポカドーロ)は気性が激しかったが、こちらは素直だ」。健康、気性、フットワーク…同師が挙げる一流馬の条件を全て満たしている。

 啄木鳥(きつつき)の子は卵からうなずくという。才能は幼い時から自然に表れるとの意味。キングストンボーイも競走馬の卵時代から素質を示してきた。「凄いエネルギーを体の奥に秘めている感じ」。札幌競馬場でデビュー前調教を担当した大江原助手は、その乗り味を絶賛した。新馬戦は直線でフラフラ遊びながら差し切った。2戦目のサウジアラビアRCは出遅れた上、不良馬場に集中力を持続できず5着。「幼すぎる。経験が必要です」と主戦ルメールが珍しく藤沢和師に口をとがらせた。だが、前走ベゴニア賞では一転して好スタート。ふらつくこともなく差し切った。「レースを2回経験して大人になりました」とルメールも満足顔。その後は暮れの2歳G1に見向きもせず、放牧でさらなる成長を促した。

 「素晴らしい馬。なんとかクラシックに持っていきたい。2歳時は男の子だから子供っぽかったけど、3歳2月としては成長している。経験から学んだよね」。馬も経験から…。日本の名調教師も英国の名女優と同じ言葉で締めくくった。

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2021年2月11日のニュース