【NHKマイルC】シュネルマイスター ドイツ産日本調教馬JRA・G1史上初V、競馬界に新風

2021年5月10日 05:30

<NHKマイルカップ>レースを制したシュネルマイスター(左から2頭目)。右は2着のソングライン(撮影・郡司 修)

 日本競馬に新たな風が吹き込まれた。3歳マイル王を決する「第26回NHKマイルC」が9日、東京競馬場で行われ、ドイツ産、2番人気の(外)シュネルマイスター(牡=手塚、父キングマン)が快勝。同国産の日本調教馬のJRA・G1制覇は史上初。(外)の優勝は01年クロフネ以来20年ぶり。デビュー4戦目での勝利は12年カレンブラックヒルと並ぶレース史上最少キャリアとなった。クリストフ・ルメール(41)は16年メジャーエンブレムに続く同レース2勝目を飾った。

 直線残り200メートル。手応えは明らかに先に抜け出したソングラインが優勢だった。直後から先に仕掛けたシュネルマイスターだが、なかなか差が詰まらない。残り100メートルを過ぎてもまだ2馬身。「届かないか。でもラストファイト。お願い!!」。ルメールの渾身(こんしん)の左ステッキと祈りが通じた。ゴール寸前でようやくトップギア。粘るソングラインを鼻差でねじ伏せた。

 主導権を握ると思われたバスラットレオンがスタートで落馬。代わってハナに立ったピクシーナイトが前半5F56秒9のハイラップを刻んだ。「前走が2000メートルだったので、最初は馬が千六のリズムにびっくりしていた」。だが、そこは百戦錬磨の名手。「変にプレッシャーをかけず、少しずつ流れに乗せていったことで呼吸も整った」。愛馬が落ち着けば今度は鞍上の腕の見せどころ。「池添さんの馬(ソングライン)が前でよく動いていたので、いい目標にできた」。勝負の流れを一瞬で見極め、相手を1頭に絞り込んだ好判断が勝利を引き寄せた。

 弥生賞2着で権利を取りながら皐月賞を見送り、ここに照準を合わせた。「マイルの方がパフォーマンスを発揮できると決断したが、僕の中でも凄いチャレンジだった。結果が出てホッとしている。道中は余裕がないように見えたが鞍上のアクションに必ず呼応する馬。最後は伸びると信じていた」。手塚師は安堵(あんど)の表情を浮かべて汗を拭った。

 ドイツ産馬のG1制覇は95年ジャパンC以来2頭目。国内調教馬では初の快挙だ。師は「日本にはいない貴重な血統。G1という勲章を手にして、いろんな意味でこの馬の未来が明るくなった」と喜んだ。ドイツでも騎乗経験のあるルメールは「ドイツ競馬は馬場が重いのでタフな馬が多い。最後の“お願い”が通じたのは、それもあるのかも」。鋭く見えた末脚は3F34秒0。見た目以上にタフな消耗戦だった。

 同じ手塚厩舎で菊花賞を勝ったフィエールマンと並ぶ、デビュー4戦目でのG1制覇。師は「勝ち方は似ているけど、こちらはまだボテッとした体つき。もっと成長してもらわないと。でも楽しみはある」と将来を見据える。今後については「マイル路線を歩むことになると思う。シビアな競馬で疲れもあると思うので、まずは馬の状態を見てから」と語るにとどめた。ゲルマン魂でもぎ取った勲章。サンデーサイレンス系で飽和状態にある日本の生産界にとっても大きな財産となった。

 ◆シュネルマイスター 父キングマン 母セリエンホルデ(母の父ソルジャーホロウ)18年3月23日生まれ 牡3歳 美浦・手塚厩舎所属 馬主・サンデーレーシング 生産者・独国ノーザンファーム 戦績4戦3勝 総獲得賞金1億4838万2000円。馬名の由来は「スピードの名人」(ドイツ語)。

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