【オークス】ユーバーレーベンV!天国の岡田総帥に勝利届けた ミルコ「昔からいい馬に うれしい」

2021年5月24日 05:30

オークスを制したM・デムーロはユーバーレーベンの鞍上でガッツポーズ(撮影・西川 祐介)

 牝馬クラシック第2弾「第82回オークス」が23日、東京競馬場で行われ、ミルコ・デムーロ(42)騎乗の3番人気ユーバーレーベンが直線で早めに先頭に立って快勝。通算2勝目がクラシック制覇となった。長くサラブレッドクラブ・ラフィアンを率い、3月19日に亡くなった岡田繁幸氏にささげる大きな1勝。秋は秋華賞(10月17日、阪神)で2冠に挑む。単勝1・9倍、断然の1番人気となった白毛のソダシはマーク厳しく8着に失速。6戦目で初めて土がついた。

 M・デムーロが青空に向け、右手のムチを高々と突き上げる。競馬場の4791人から拍手が起こった。白毛フィーバーに沸いた一戦を制したのは輝きも苦悩も味わってきた人馬。予想外の物語にも観衆は称賛を惜しまなかった。

 勝負は向正面。馬群から少し離れ、ユーバーレーベンをリラックスさせた。「じゃあ、行こう」。徐々にスパートをかけた。スタミナに自信のゴールドシップ産駒。長く脚を使おうと決めた。直線を向いて残り250メートルでもう先頭だ。「(先頭に)立つのが早いな」。手塚師は心配したが馬は止まらなかった。ソダシを置き去りにする。内からアカイトリノムスメ。1馬身差しのいだ。新馬戦以来の2勝目は何とクラシックだった。

 「感動した。うれしい。距離は問題ないと思っていたし3、4コーナーでペースが上がった時も楽だった。でも物見するかもしれない。“お願い”って言いながら追っていた」。冗舌に勝因を語った後、ひと呼吸置いた。「人生は難しい。うまくいかないよ」。15日、親交のあったモーリシャスのチャンピオン騎手が29歳の若さで落馬で亡くなった。4月22日に長男ジョシュア君が生まれ、喜びに浸っていた中での衝撃的な知らせだった。人生の無常を感じ、目の前の一鞍を大事に乗ろうと決めた。

 何より、3月19日の誕生日に71歳で世を去った岡田繁幸氏にVをささげたかった。ミルコは北海道でのお別れ会にも顔を出し「ユーバーレーベンで勝ちたい」と周囲に語った。「昔からいい馬に乗せてもらっていたのでうれしい」と天国の岡田氏に報告した。

 手塚師も「それが一番良かったかな」と胸をなで下ろした。東京の新馬戦を快勝。早くからG1候補と言われたが、その後は白星から遠ざかった。せん痛などで桜花賞出走はかなわず、3着続きで賞金も積めなかった。馬名はドイツ語で「生き残る」。何とかオークス戦線に生き残り、ストレスをかけない調教を施すと別馬のように状態が上がった。「出走できたことが幸運だった。やっと一矢報えた」。苦労の先に栄光があった。

 ソダシを育てたのは須貝師と今浪厩務員のゴールドシップコンビ。そのソダシを止めたのがゴールドシップ産駒。これだから競馬は面白い。今後は放牧。そして新たな戦いが待つ。次なる目標は秋華賞だ。

 ◆ユーバーレーベン 父ゴールドシップ 母マイネテレジア(母の父ロージズインメイ)18年1月27日生まれ 美浦・手塚厩舎所属 馬主・サラブレッドクラブ・ラフィアン 生産者・北海道新冠町ビッグレッドファーム 戦績7戦2勝 総獲得賞金1億9635万5000円。馬名の由来はドイツ語で「生き残る」。

【アラカルト】

 ☆1勝馬 1939年ホシホマレ(11戦1勝=レース前まで)、95年ダンスパートナー(4戦1勝)に次ぐ史上3頭目。26年ぶりの快挙。

 ☆強い3歳 手塚貴久師は延べ10頭目でオークス初制覇。今年はNHKマイルCをシュネルマイスターで制しており、3歳勢の強さを見せつけている。

 ☆10年連続 M・デムーロは19年ラヴズオンリーユー以来のオークスV。JRA・G1は20年NHKマイルC(ラウダシオン)以来で通算33勝目。12年から10年連続、JRA・G1勝ち。

 ☆悲願 ゴールドシップ産駒は延べ12頭目でJRA・G1初勝利。昨年のオークスはウインマイティーが3着。JRA重賞は2勝目。

 ☆ラフィアンも サラブレッドクラブ・ラフィアンは延べ18頭目の出走でオークス初勝利。クラシックも初勝利。JRA・G1は13年NHKマイルC(マイネルホウオウ)以来、6勝目。

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