【北九州記念】ヨカヨカ 熊本産馬初のJRA重賞制覇!薩摩隼人・幸が会心タクト
2021年8月23日 05:30 悲願なる!!雨中決戦となった22日の「第56回北九州記念」は、幸英明(45)騎乗のヨカヨカ(牝3=谷)が鮮やかな差し切りを決め、待望の重賞初制覇を飾った。九州産馬としては05年アイビスサマーダッシュを制したテイエムチュラサン以来16年ぶりのJRA平地重賞制覇。熊本産としては初のJRA重賞Vとなった。初タイトルを手に、秋はG1の頂を目指す。
レース直前に降り出したたたきつける雨も幸は渾身(こんしん)の手綱で“恵みの雨”に変えた。
ヨカヨカはスタートから積極的に位置を取りに動く。明らかに外差し傾向の馬場。が、突然の雨で前が止まらない馬場に変ぼうしつつあったからだ。
ラチ沿いに果敢な逃げを打つモズスーパーフレア。前に3、4頭を置く位置の外めを抜群の手応えで追走する。重く脚元に絡む雨馬場も彼女の足かせにはならなかった。
「最後は必死でした。道中は手応え良く、スムーズな走り。4コーナーを回るところで“これなら”と。それでも最後は無我夢中でした」
減量で研ぎ澄まされた体に“鬼”が宿った。直線ははじかれた矢のよう。内に逃げ粘るモズを捉え、最後はCBC賞覇者ファストフォースの追い上げを封じて的のド真ん中を射抜いた。鹿児島出身の幸にとって、この勝利は特別な意味を持つ。
「元々九州産は(恩師の)谷八郎先生(98年引退=潔師の父)がたくさん管理されていた。お世話になった谷先生がお亡くなりになり、ちょうど一周忌でした。それもあり、勝てて凄くうれしいです」
表情は雨空と裏腹に晴れ晴れしい。大きな仕事をやり遂げた達成感に輝いてみえた。管理する谷師は目を赤く腫らしている。
「九州の馬主さんにはこれまでお世話になり、こういう馬が出てきてくれた。ちょうど先週が親父の一周忌でした。父が後押ししてくれたのかと思う。幸もしっかりした鞍で乗ってくれた。九州で、九州産で重賞を勝てた。感無量という言葉しかありません」
重賞舞台ではフィリーズレビューの2着など惜敗を続けたが、ついに悲願に手を届かせた。次なる目標はもちろんG1制覇。
「今回が全力投球だったからね。これから馬の様子を見て、オーナーと相談して」と谷師。目の前にはスプリンターズS(10月3日、中山)の大舞台が待っている。ヨカヨカは熊本弁で「いいよ」だが、「構わんよ」の意味も。そう、相手が強くても一向に構わんばい。タイトル奪取で勢いに乗る九州産がこの秋、新たな伝説を作る。
▽九州産とは 九州で生産された馬のこと。日本で生産される競走馬は年間7000頭余り。大多数が北海道で生産されており、他の馬産地として青森県などがある。九州産は19年の生産実績で62頭。わずか1%にすぎない。元々南九州は馬産が盛んだったが、拠点が北海道に移り、衰退の一途をたどった。しかし近年ヨカヨカの生産者・本田土寿氏のように九州産の復興を目指し新たなムーブが起きている。
◆ヨカヨカ 父スクワートルスクワート 母ハニーダンサー(母の父デインヒルダンサー)18年5月13日生まれ 牝3歳 栗東・谷厩舎所属 馬主・岡浩二氏 生産者・熊本県の本田土寿氏 戦績10戦4勝(重賞初勝利) 総獲得賞金1億2711万4000円。馬名の由来は九州の方言で「いいよ、いいよ」。
【北九州記念アラカルト】
☆騎手&調教師 幸の重賞勝利は今年のファルコンS(ルークズネスト)以来で通算40勝目。谷師は14年の菊花賞(トーホウジャッカル)以来で通算4勝目。
☆種牡馬 スクワートルスクワートの産駒は重賞挑戦延べ39頭目で初勝利。
☆軽ハンデ 北九州記念を最軽量ハンデ馬が勝利したのは初。