【凱旋門賞インタビュー】ブルームで臨む武豊「ボクは挑んで挑んで挑み続けています」

2021年9月29日 11:01

武豊

 どれだけ経験を積んだトップジョッキーでも、この舞台は特別――。区切りの第100回を迎える凱旋門賞に武豊(52)はそんな重みを感じている。自身9度目のチャレンジとなる今年はアイルランドの名トレーナー、エイダン・オブライエン師(51)とのタッグでブルームに騎乗。過去8回、はね返された壁は分厚い。だからこそ、気持ちは高まっている。当事者の一人として決戦ウイークを楽しみながら、誇りを胸に、パートナーの力を引き出す意気込みをスポニチに語った。

  ――今回で9度目の騎乗となる凱旋門賞。自身の足跡を振り返ってほしい。
 「ボクが初めて乗ったのはホワイトマズル(94年)の時で、当時はほとんどの人が凱旋門賞のことを知らなかった。それが今はみんなが知る海外のG1レース。ボクは挑んで、挑んで、挑み続けていますが、日本馬にも同じことがいえるわけです。これまで多くのスターホースが挑んだ積み重ねで、いつしか日本の悲願のレースと表現されるようになった」

 ――あのディープインパクトでも勝てなかった。
 「8月に(フランスの競馬専門チャンネル)エキディアの取材があって、その番組の進行役がクリストフ(ルメール)でした。一緒にディープインパクトが走った凱旋門賞の映像で当時を振り返りました。2着だったクリストフ(プライドに騎乗)も、ディープをマークしていたと言ってましたよ。欧州メディアは今でもディープが日本馬のチャレンジした象徴の馬としてリスペクトしてくれています。結果についてはジョッキー人生で一番、悔しいレースです」

 ――今年は日本馬2頭の鞍上が外国人ジョッキーとなり、外国馬に武豊。それについては?
 「日本の競馬ファンが応援する順序は普通に考えれば真っ先に応援するのは日本馬で、興味はその次。日本国内で馬券も発売するからディープインパクト産駒のスノーフォールも応援に熱が入りそうですね。でも、ボクもまあまあの人気があるので(笑い)応援はしていただけると思います。シビアに馬券を検討する順番なら、もっと下位かもしれないけど、順序として日本馬の次くらいで応援してもらえないと困りますよ。そう、こんなことがありました。中京競馬場のパドックで騎乗馬の厩務員さんから、ボクはユタカさんに何としても勝ってほしいですと言われたことが何度かあって、うれしかったです。今はコロナ禍で口取りがないからファンの皆さんの声を聞くことはないけど、その分まで厩舎スタッフや、ジョッキー仲間から激励をしっかり頂いています」

 ――今年の騎乗馬はブルーム。戦歴の中で光るのはサンクルー大賞(3走前)のG1勝利。どんな脚質と判断しているのか。
 「サンクルー大賞は欧州版・上半期のグランプリレースみたいな趣旨で、日本の宝塚記念に相当する。サンクルー大賞の勝ち馬が凱旋門賞で活躍する例は多くありますよ。ただ、トレヴがサンクルー大賞を勝った15年は凱旋門賞(4着)で3連覇を成し遂げられなかったけど、重要なステップとして選んだレースには違いない。で、ブルームの脚質はどうなんでしょう。今年のサンクルー大賞は逃げ切りでしたが、追い込みも可能だし、展開に応じて走れると思います」

 ――天才調教師エイダン・オブライエン師のいわゆる作戦会議がある。
 「参加するのは初めてだから楽しみですよ。ただ、エイダンは厩舎の馬に乗るジョッキーを一堂に集めて指示をするのとは違います。ボクが今まで目撃したのはホテルのロビーや、レストランなどでエイダンが、ジョッキーと会話をしている光景。どんなことを言っているのかな?と興味津々になっちゃいますよね。なので、世界的な名調教師がどういったシチュエーションで、どんなオーダーを与えてくるか楽しみです」

 ―出走馬を見渡して感想を。
 「地元フランスは今年に限っては劣勢じゃないかな。それでも凱旋門賞になると意地を見せるのがフランスの馬だけど、今年はフランスの主要G1をアイルランド、イギリスの馬が勝っている事実がある。日本馬はディープボンドがフォワ賞を勝ったことによってクロノジェネシスの株が上がると思います。だって国内のG1成績はクロノジェネシスの方が上ですからね」

 ――凱旋門賞について楽しい話があれば聞かせてほしい。
 「余談でいいですか。ディープボンドが勝ったフォワ賞は日本時間の真夜中でしたよね。グリーンチャンネルで生中継していたので視聴していましたが、レース直後に電話をくれたのが前田幸治オーナーでした。ボクが乗る馬でもないのになんで?と不思議がることもなく、おめでとうございますと祝福させてもらいましたが、そういったなにげない出来事も凱旋門賞に関する話なのでボクは楽しくて仕方ない。ほんのひと握りのホースマンしか関われないのが凱旋門賞。まして、日本はまだ勝ったことがないレースで悲願なのか、夢なのかは個人次第だけど、その舞台に立てることを誇らしく感じるのは当然のこと。今年は記念の第100回。何かが起きませんかね?日本のファンの皆さんには決して見逃さないでください、とお願いしておきます」

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