【スプリンターズS】ピクシーナイトが短距離界新王者!福永「想像超える走り」でG1初制覇

2021年10月4日 05:30

<スプリンターズS>14年ぶりに3歳馬Vを飾ったピクシーナイト(左)中央は3着シヴァージ、右は2着レシステンシア(撮影・郡司 修)

 秋のG1シリーズ開幕を告げる「第55回スプリンターズS」が3日、中山競馬場で行われ、3番人気の3歳馬ピクシーナイト(牡=音無、父モーリス)がG1初制覇を飾った。3歳馬の同レースVは07年アストンマーチャン以来。牡馬では98年マイネルラヴ以来、23年ぶりの快挙。鞍上の福永祐一(44)、管理する音無秀孝師(67)共に、同レース初優勝。現3歳が初年度となる種牡馬モーリスはG1初制覇で、グラスワンダー~スクリーンヒーローからの4代父子G1制覇はJRA史上初の快挙となった。

 秋の夕日が差し込む脱鞍所。殊勲の愛馬ピクシーナイトを待つ音無師に、先に引き揚げてきた2着レシステンシアのルメールが声をかけた。「強すぎるよ、センセー。オメデトウ」。着差の広がりにくい短距離G1で、圧勝とも言える2馬身差。道中で徹底マークしながら、直線で突き放された名手は、素直に完敗を認めるしかなかった。

 モズスーパーフレアが逃げ、ビアンフェが2番手。好スタートのピクシーは労せず3番手に収まった。「想定ではもう一列後ろ。レシステンシアを見ながらと思っていたが、ここまでいい位置を取れるとは。正直、驚いた」と福永。そのレシスが3~4角で外から並びかけた。「本当は外に出したかったが、それではブロックされる」。ルメールの動きを察知した福永は迷わず、先行2頭の間に生まれたわずかな隙間を割った。「きつい形だったが、馬が自身の圧力で(スペースを)勝ち取った」。一気に抜け出し勝負を決めた。

 福永が「一番のポイントだった」と振り返ったのが、中2週の臨戦過程。同じローテで臨んだ春のNHKマイルCでは、馬に「精神的なストレス」を感じたという。「今回はパドックからおとなしく、馬場入場後も落ち着いて歩けていた」。課題はひとつクリアしたが、一方で「返し馬ではまだ前後のバランスが悪い走り。現状でどこまでやれるかな…」。半信半疑のゲート入りも、結果は文句なしの完勝。「想像を超える走りだった」と称えた。

 デビュー戦から手綱を取る鞍上は「音無厩舎ならインディチャンプの後継と思っていたし、ロードカナロアの若い時にも思った圧倒的な能力を感じていた」と振り返る。春はマイルに挑戦したが、鞍上の進言でスプリント路線へ転向。「必ず大きいところを獲ると確信していたが、結果につながったのは騎手としても自信になった」と胸を張った。母の父はキングヘイロー。かつて主戦を務めながら、自身の手綱でG1勝利に導けなかった。「ようやく恩返しができたかな」と満足の笑みを浮かべた。

 「彼(福永)はシンザン記念を勝つ前から“G1を獲れる馬”と言っていたから信じていましたよ」とは音無師。次走については「香港(=スプリント、12月12日、シャティン)に登録して選出されれば、行くことになる」と世界進出を明言した。「まだ緩くて、これから筋肉がついてくる馬。大事にしていきたい」。無限の可能性にあふれた若きスプリント王は、新たな勲章を求め海を渡る。

 ◆ピクシーナイト 父モーリス 母ピクシーホロウ(母の父キングヘイロー)18年5月14日生まれ 牡3歳 栗東・音無厩舎所属 馬主・シルクレーシング 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績8戦3勝(重賞2勝目) 総獲得賞金2億2764万2000円 馬名の由来は母名の一部「ピクシー」+騎士。

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