【ジャパンC】キーファーズ松島氏インタビュー 武豊が自ら選んだジャパン、明かす鞍上の真相

2021年11月24日 05:30

キーファーズの代表・松島正昭氏

 武豊を応援する馬主として有名なキーファーズの代表・松島正昭氏(63)がスポニチ本紙のインタビューに応じ、大いに語った。今週「第41回ジャパンC」に参戦するアイルランドのジャパンとブルームはクールモアグループと共同で所有していることから、意気込みばかりか来日に至る舞台裏の秘話も明かした。

 ――ジャパンカップは意義からして外国馬は本来、花形の存在。なのに一昨年は外国馬が不在になるなど手薄感が否めなかったが、今年は3頭の来日で松島氏の所有馬が2頭いる。
 「盛り上がりに貢献できるのであれば幸せなこと。ジャパンとブルームは米国のブリーダーズカップを走り終えてからの来日なのでローテーションとしては結構、過酷。当初はジャパン1頭が来日する予定だったのを、エイダン・オブライエン調教師とクールモアが、マツシマのためにブルームも連れて行くと配慮してくれたので2頭の参戦となりました」

 ――そのあたりをもう少し詳しく教えてほしい。
 「一般的に日本では馬の購入に際して売買契約書のみですが海外は違います。特にジャパンとブルームの契約書は10ページにも及ぶほどで、騎手の人選や使うレース、勝負服などに関して事細かく記されています。凱旋門賞、ブリーダーズカップ、ジャパンカップは言うに及ばずで、例えば先日のBCターフはブルームがキーファーズの勝負服を着用し、ジャパンはクールモアの勝負服。契約の一例です」

 ――今回は2頭がキーファーズの勝負服。何よりジャパンに武豊、ブルームにライアン・ムーアの起用も注目される。
 「2頭が対戦したBCターフは、ブルームが惜しい内容の2着で、ライアン騎乗のジャパンは4着。そうとあって、さもライアンがブルームを選択したかのようにネット上の書き込みや、ファンの臆測もあるそうですが事実は全く違います。エイダン・オブライエン調教師は先に武豊さんを指名し、どちらに乗りたい?と聞いたのです」

 ――武豊が2択でジャパンを選択した…と。
 「そうです。どちらに乗るか選んでほしい…となった状況で、武豊さんが1週間ほど熟考した末の決断です。ジャパンは昨年の凱旋門賞で騎乗する予定(出走取消)だったし、3歳時に大きなG1(パリ大賞、英インターナショナルS)を2つ勝っている立派な戦歴です。鞍上発表の日に彼のコメントにあった、一度は乗ってみたいという気持ちも理解できます」

 ――そのジャパンについて他に付随する話題があれば。
 「おそらく引退レースです。ジャパンカップで同文字の馬名のジャパンの走りが見納め。しかも、鞍上が武豊さん。その事実だけでも、JRAへの貢献度は大でしょう(笑い)」

 ――その武豊と松島氏のつながりは有名。今年の凱旋門賞でブルームとコンビを組んだ感想や印象に残った光景は?
 「もちろん凱旋門賞の舞台ですから、キーファーズの勝負服を身にまとった武豊さんの姿に感動はしました。それと同時に私が馬主になってから、武豊騎手で凱旋門賞を獲りたいと言い続けてきたことが恥ずかしい気持ちにもなりました。軽々しく口にできる舞台でなかったのを知ったからです。欧州の全てのホースマンの真剣さを肌で感じたからです。どれだけ情熱を注いでも勝てないのが凱旋門賞なんだ、とそのように自分自身を戒めました」

 ――凱旋門賞のパドックだけでも空気感は別格だったか?
 「クールモアの首脳とエイダン・オブライエン調教師がいて日本人は武豊さんと私。それに喜んでいても駄目ですが、普通には考えられないので高揚感は覚えます。それと何げないひとコマかもしれませんが、絵に溶け込むという表現なら、デットーリが武豊さんをイジって楽しそうにする光景が印象的でした。他にも若手騎手は武豊さんに相手をしてもらうために近づいていました。リスペクトされているのが伝わります」

 ――松島氏はエイダン・オブライエン調教師やクールモアグループとどんな間柄なのか?
 「オブライエン厩舎にはブルーム、ジャパンの他にも3頭を預託していますが、レースを使うたびにしっかり報告をしてくれます。世界的に有名な調教師で、こちらが恐縮するくらい実に誠実な方。クールモアとも円満な関係を築けている自負があります。凱旋門賞ウイークにこんなことがありました。アンドレ・ファーブル厩舎に立ち寄った時に、活躍している2歳馬を馬房から出してくれて共同所有を持ちかけられる話がありました。帰国後に、所有するクールモアから電話があり、あの2歳馬は短距離だけどいいのか?マツシマが狙っているのは凱旋門賞だろう、と。普通は売る側がこんなことを言わないじゃないですか。私のことも本気で考えてくれているのだな、と思うとありがたい気持ちになりました」

 ――改めてジャパンカップへの意気込みを。
 「過去の例をみても東京の高速馬場に対して欧州の実績馬は苦しんでいます。結果は神のみぞ知る、でいいじゃないですか。むしろ馬主としては日本と欧州を代表する騎手に乗ってもらえることが光栄なので、その姿を目に焼き付けておきます。今回がラストランになるであろうジャパンと、来年も現役続行のブルームが無事に走り終えてくれれば、それで十分です」

 ◇松島 正昭(まつしま・まさあき)1958年(昭33)2月23日生まれ、京都府出身の63歳。同志社大を卒業後、大丸百貨店を経て85年に(株)京都マツダに入社。98年に代表取締役社長に就任、外車販売を含めた事業の拡大で14年に社名は(株)マツシマホールディングスに変更。馬主歴は15年からで重賞はマイラプソディで19年京都2歳S、海外はジェニアル、ジャパン、ブルームで計6勝。

特集

2021年11月24日のニュース