【高松宮記念】グレナディアガーズ100点 トモと肩に城壁のような厚い筋肉
2022年3月23日 05:30 体形変異のスプリンターが春のG1開幕戦を制す。鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第52回高松宮記念(27日、中京)ではレシステンシアと共に1200メートル未経験のグレナディアガーズを満点採点した。達眼が捉えたのは19年スプリンターズS優勝馬タワーオブロンドンと共通するマイラーからスプリンター体形への変異だ。
名は体を表すといいます。競馬に当てはめれば馬名は体形を表すとでも言うべきか。グレナディアガーズとは英王室の宮殿を警備する近衛歩兵連隊。バッキンガム宮殿を本拠地にしていますが、中世には英国王が居住していたロンドン塔(タワー・オブ・ロンドン)に拠点を置いたそうです。そんな名前をつけられた鹿毛馬の体形に驚かされました。3年前の秋にタワーオブロンドンの鹿毛の馬体が示した変化と同じだったからです。
G1初制覇を飾った19年スプリンターズS。その馬体診断でタワーオブロンドンについてこう記しました。「トモ(後肢)と肩(前肢)に城壁のような厚い筋肉をつけている。3歳春当時のマイラーを思わせる体形からスプリンターの体形へ。競馬を重ねながら短距離馬としての本性を現してきたのか…ともあれ、距離短縮を心配するような体つきではありません」。今回のグレナディアガーズにもそのまま当てはまる評価です。
朝日杯FS(優勝)、NHKマイルC(3着)などのマイル実績にふさわしいマイラー体形が古馬になってスプリンター色の強い体形に変化している。トモと肩には大きくて強靱(きょうじん)な筋肉。極限のスピードに対応できる体つき。ここまで筋肉が発達してしまうと、マイルを走るには邪魔になるでしょう。
桜開花の便りが届く季節。英国から持ち込まれたタイハクザクラという桜の変異種は、加齢とともに1本の枝に色違いの花を咲かせる“枝変わり”を起こします。タワーオブロンドンとグレナディアガーズ。英国つながりの名を持つ2頭が示したのは“体形変わり”と呼びたくなる競走馬の変異。マイラーからスプリンターへ。馬名は体形を表すのです。 (NHK解説者)
◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。